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直前評価は真っ二つ? ドラ1候補の東洋大・細野晴希「ジキルとハイド」の投球に見るMAX158kmの“底知れぬ潜在能力”「安定感はない。それでも…」 

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酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

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photograph byHideki Sugiyama

posted2023/10/25 11:00

直前評価は真っ二つ? ドラ1候補の東洋大・細野晴希「ジキルとハイド」の投球に見るMAX158kmの“底知れぬ潜在能力”「安定感はない。それでも…」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

注目左腕の東洋大・細野はどの球団の指名を受けるのか

 彼の魅力がもっとも際立ったマウンドのひとつが8月28日に東京ドームで行われた侍ジャパンU-18壮行試合だろう。大学日本代表の一員として、5回に登板した。

「もっと出そうだなという感覚が…」

「あの時は、完全に相手を見下していたからね。凄い球を投げていたよ」

 球場で見ていたスカウトの感想である。1回2奪三振無失点。13球のうちの1球が158kmを計測した。緒方漣(横浜高)を相手に完全に上ずったボール球だったが、細野の計り知れないスケールを感じさせた。まぐれではない。その直後も異次元のストレートを立て続けに投げ込み、まともに当てさせなかった。

 156、157、153、155……。

 東京ドームのスピードガンは規格外の球速を計測し続けた。高校生が相手とはいえ、圧巻のピッチングである。この光景を見て、私は3カ月前の細野との会話を思い出していた。彼がそれまでの自己最速の155kmを計測したのは3年生だった昨年春の中央大との1部・2部入替戦だった。その時のことを振り返り、さらりと言った。

「これで155kmだと、もっと出そうだなという感覚があるんです。ピンチだったので多少、力を入れていましたが、そんなに全力でというと、そうではなかったですね」

左腕が秘める潜在能力

 あの時は「そうなのか」と思ったくらいで今後への期待感も込めて、8月のNumber Webの記事でも触れたのだが、自身の最速をさらに3kmも上回る球速をはじき出した今となっては、まったく違う意味を持つ。彼のなかに、投げるボールに対する力加減の感覚が備わっている。しかも、まだ余力があることを自覚しており、そのことが底知れぬ潜在能力を感じさせる。

 日本人左腕の158kmがどれほどスゴイのか。NPBではDeNAのエドウィン・エスコバーの163kmが最速だが、日本人では元ソフトバンクの古谷優人が2019年5月、三軍交流戦で計測した160kmが左腕最速である。西武時代の菊池雄星(現ブルージェイズ)や元ソフトバンクの川原弘之と並ぶ球速で、アマチュア球界では史上最速だった。

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