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「姫野のジャッカルは4年前と大きく違う」姫野和樹の“必殺技”はなぜ決まる? 野澤武史氏が明かす「成功の裏に“2人の男”の存在」

posted2023/10/02 17:01

 
「姫野のジャッカルは4年前と大きく違う」姫野和樹の“必殺技”はなぜ決まる? 野澤武史氏が明かす「成功の裏に“2人の男”の存在」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

今大会、日本代表のキャプテンを務める姫野和樹。代名詞“ジャッカル”は健在だが、実は「4年前とは異なる」と野澤武史氏は解説する

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野澤武史

野澤武史Takeshi Nozawa

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Kiichi Matsumoto

 ラグビーW杯フランス大会、日本はプールステージ第3戦でサモアに28―22で競り勝ち、2大会連続の決勝トーナメント進出に王手をかけた。この試合で後半9分にトライを挙げ、さらに「ジャッカル」を決めるなど活躍したのがNO8の姫野和樹(トヨタ)だ。姫野はなぜ「ジャッカル」を決められるのか? 前回大会からの驚くべき進化とは――。元慶応大ラグビー部キャプテンで日本代表経験もある野澤武史氏が解説する。

2019年とは明らかに違うポジショニング

 前回の2019年大会から姫野の代名詞として有名になった「ジャッカル」。タックルで倒された相手からボールを奪うことを指しますが、タイミングや位置取り、瞬時の判断が必要となる難しい技でもあります。

 サモア戦の「ジャッカル」を振り返ってみましょう。9点リードの後半開始早々、サモアにキックで22mラインを越えられた後、迎えた相手ボールのラインアウト。サモアの連続攻撃を受ける中で、密集の外側から“獲物”を見つけた姫野が素早くボールを奪い「ジャッカル」を成功させました。

 この時の姫野のポジショニングにフォーカスしてみると、2019年大会時とは違う明らかな変化に気がつきました。姫野がジャッカルに成功するシーンで彼はラックが出来た時に、一番近い位置に立つ「柱」を意味する「ピラー」と呼ばれる位置にポジショニングしています。これはイングランド戦も同様で、映像で確認するとジャッカルに成功していない場合も、この位置に意図的にポジショニングしているように見えます。通常ボールをもらう選手の対面にはラックから3番目のディフェンダーがタックラーとして立ち、その内外のアシストタックラー、つまりラックから2、4番目に位置する選手が連携して相手を止めます。姫野はその「さらに内」に立つことで倒す作業ではなくジャッカルに専念しています。

2019年は姫野個人の判断でジャッカルだったが…

 2019年大会で姫野は「ジャッカル」を4試合で5度成功させていますが、映像を見返すと、当時はラックから4番目、5番目といった位置に立ってタックルをしていた。ここは主にチームのアタックの要が攻撃を仕掛けてくるのを止めるのが役割です。その中で、相手がたまたま早く倒れた時や、サポートが遅れた時などに素早く走っていって「ジャッカル」を仕掛けていました。4年前のプレーは姫野個人の判断で偶然のチャンスを狙っていた形ですが、今回は違う。組織として意図的に「ジャッカル」を狙うポジションに入り、必然の成功を勝ち取っている。これは大きな変化です。

【次ページ】 姫野のジャッカルを下支えする2人の男

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