「周りも少しずつ、自分の受け方とか、良さみたいなところはわかってきていると思う。例えば、シンプルにパスをつけてくれる回数などが多くなってきているので」

　こうした事情があるからこそ遠藤は落ち着き払って、今回の試合をこう総括した。

「個人的には、別に今日のパフォーマンスがめちゃくちゃ悪かったと思っていないですしね。メンバーを大きく代えながらやったという難しさもあったので。急に大きく成長するわけではないと思うし、少しずつ、でもしっかりとやっていければいいと思います」

試合後、笑顔でコミュニケーションを取るクロップ監督と遠藤　©Getty Images

　もし、ブレているようならば、それは問題である。

　移籍によって本来持っている力を発揮できなくなるケースの多くは、新しい環境に適応しようとするなかで、もともとできていたプレーをやめてしまうことだ。

　確かに、短期的に見れば、ああいう場面でも簡単に蹴りだすことが正解なのかもしれない。でも、そんな安全第一のプレーだけをしていても成長はない。

　遠藤は現状を分析できる冷静な視点は持ちつつも、決してブレない。

　リスクと隣り合わせのなかでトライしてきたことで、残留争いにいるチームのなかで個人の力を評価され、ここまできたわけだから。

　もちろん、新しいサッカーに適応する過程で困難はある。それでも、決して折れないマインドにこそ、今後、活躍するためのカギは隠されている。

遠藤も鎌田も、新天地で現状に甘んじることはない

6月シリーズ、ペルー戦の遠藤　©Kiichi Matsumoto

　遠藤も鎌田も、6月に続いて今月の代表戦でも素晴らしいプレーを見せ、日本に欠かせない選手としての存在感を発揮した。ただ、彼らは安住することなく、今夏に新天地を選び、もがいたりしながらも戦い続けている。現状に甘んじたら劣化は始まる。新しい挑戦の先にこそ進化が待っていることを忘れてはいけない。

＜「鎌田編」につづく＞