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南半球でキムチ鍋、“勝負飯”のカレーを急きょ…ラグビー日本代表に帯同する西芳照シェフの料理が愛される理由〈なでしこ秘話から紐解く〉 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2023/09/17 11:01

南半球でキムチ鍋、“勝負飯”のカレーを急きょ…ラグビー日本代表に帯同する西芳照シェフの料理が愛される理由〈なでしこ秘話から紐解く〉<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

桜戦士の胃袋を支える西シェフ

熊谷のリクエストから生まれた“勝利飯”

 そんなときだった。スペイン戦を前に、キャプテンの熊谷紗希から試合後のスープスパとフォーをリクエストされた。

 なるほどと思った。これならロッカーで多少食べてきたとしても、見た目的にも胃が受けつけやすいのかもしれない、と。

 スペイン代表に4-0と勝利した夜、食卓にスープスパとフォーを並べると、選手たちは思った以上によく食べたという。チキンのスープに、麺は細麺、平打ち麺を用意。筋肉を修復するにはたんぱく質が必要なため、チャーシューと玉子をトッピングにしている。ワカメ、もやし、キクラゲなど海藻や野菜もたっぷりと摂れるようにした。

焼き鳥風料理に「鉄分摂取」の工夫が

 選手の反応を見ながら、要望を聞きながらメニューを調整していく。たとえばレーズン、プルーンといったドライフルーツなど置いてはいるものの、積極的に食べている感じはなかった。鉄分をいかに摂ってもらえるか。宿泊したホテルでペースト状にしたダックのレバーが「臭みがなくておいしい」と知ると、すぐにダックのレバーを使って作ったタレを焼き鳥風料理にかけている。現地でいい食材に出会えば、速攻でメニューに反映させる。こういった反射神経の良さも、西ならではだ。

 いつかなでしこジャパンの力になれたら、とは思っていた。

 西は震災で甚大な被害を受けた福島・南相馬市の出身。あの3・11、楢葉町、広野町にまたがるJヴィレッジで被災した。一時、東京で避難生活を送っていたものの、居ても立ってもいられず原発事故の対応拠点となった同地に戻ることを決断している。

【次ページ】 涙、涙の選手たちが笑顔に

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