3年生への申し訳なさはもちろん持っている。

　それでも夏の大会は負けて終わりであってそうではない。立ち止まらずに、残された下級生らと共に来年に向けたチームを作っていかなくてはいけない。

「時間はありましたので、チーム内の競争もありながら、形にはなってきていると思います。試合経験の少ない子が多いので、とにかく1戦1戦で出た課題を潰していく。これからこういうチーム作りをする、というより、どんなチームが完成形なのか探りながら負けにくいチームを目指していきたいです」

　粉河との戦いは、9人中6人の1年生がスタメンに名を連ねた。バッテリーを入れ替えるなど多くの選手に経験を積ませ、チームを活性化させながら進化を図っている最中であることも見て取れた。

2021年にはコロナ禍の中で夏の甲子園を制した智弁和歌山　©︎Hideki Sugiyama

　18安打のうち長打は2本のみだった結果に「長打を打てない打線です」と指揮官は苦笑いしたが、相手の変則右腕を見立てたチームの戦略だったことを明かす。

「遠くへ飛ばそうとするとドツボにはまってしまうピッチャーなので、選手たちが考えた結果です。結果が全てというところで考えると、センター中心に逆方向を意識して勝負をかける。一発勝負の怖さをこの夏に彼らも勉強しましたので、その場面、その場面で状況を考えてやっているんじゃないですかね」（中谷監督）

全国制覇→2年後、県大会1回戦負け…名門の復活なるか

　2年前のちょうどこの時期にチームは夏の甲子園で全国制覇を果たしていた。まさに天国と地獄を味わったこの2年間。だが、指揮官の表情は明るい。

「僕自身のことを語るべきではないですが、色々経験をさせてもらって楽しいですよ」

　母校の指揮を執って丸5年。まさにジェットコースターのような監督人生だが、智弁和歌山はこんなものじゃない―――。

　毅然とした指揮官の目つきが、そう言っているようだった。