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初代表で「体に触ることすら…」バングーナガンデ佳史扶がコロンビア以上に衝撃だった瞬間は?「僕は奪いに行く側」パリ五輪代表への野心 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byKiichi Matsumoto/JMPA

posted2023/08/25 11:05

初代表で「体に触ることすら…」バングーナガンデ佳史扶がコロンビア以上に衝撃だった瞬間は?「僕は奪いに行く側」パリ五輪代表への野心<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto/JMPA

バングーナガンデ佳史扶は日本代表3月シリーズ、コロンビア戦でA代表デビューを飾っている

 ツエーゲン金沢との練習試合でのことだ。負傷者の治療のためにゲームが中断し、再開するとき、佳史扶が「集中していきましょう!」と大声でチームメイトを鼓舞した。その姿を見たチームスタッフは、佳史扶が変わりつつあることを実感したという。

 2月7日に明治神宮で行われた必勝祈願では、絵馬にシンプルだが力強く、今季の覚悟を書き込んだ。

「『勝つ』って書きました。勝つって当たり前のことなんですけど、自分の中では一番重要なことで、試合に勝つのはもちろん、目の前の相手に勝つ、ポジション争いに勝つ、いろんなことに勝ちたいなって。僕は、プレーはアグレッシブなんですけど、性格的には積極性が足りなくて、そのギャップを感じていて。自分自身に勝つという意味でも、思いを込めて書きました」

「俺は21歳で代表に入ったから、今年入らないとな」と

 長友や新加入の徳元悠平との争いを制してポジションを掴んだ佳史扶は、3月15日のトレーニング前、長友から「頑張ってこいよ」と声をかけられた。

「それがなんのことだか全然わからなくて。練習中もなんのことだろうって」

 その言葉の意味するところを理解したのは、練習が終わってからだった。ウルグアイ、コロンビアと対戦する日本代表に選出されたことを、チームメイトの前で伝えられたのだ。

「ああ、こういうことかって。佑都さん自身、まだまだ代表に入る気でやっているのに、すごく喜んでくれて。佑都さんにはキャンプのときから『俺は21歳で代表に入ったから、今年入らないとな』って言われていたんです。W杯に4回も出た佑都さんとは比べものにならないですけど、自分も通過点としか思っていないので、ここからだなっていう気持ちが強かったです」

コロンビア戦、それ以上に衝撃だったトレーニング

 代表デビューとなったコロンビア戦では55分に相手選手と接触して右膝膝蓋骨を損傷――無念の途中交代に終わった。

 だが、そうしたアクシデント以上に佳史扶が悔やむのは、自身のパフォーマンスである。「デビュー戦としてはまずまず」という大方の見方とは裏腹に、悔いの残るデビュー戦となった。

「無難なプレーに終始してしまって。アグレッシブなプレーやスピード、強度には自信があったんですけど、あの中でやったら普通だったというか、全然ダメ。まだまだ足りないっていうことを突きつけられて、打ちのめされました。

 しかも、マッチアップしたコロンビアの選手(ジョン・ドゥラン)は19歳だったんですけど、プレミア(アストンビラ所属)でやっている選手で、対応することしかできなくて。そのうえで自分の良さも出すとなると、もう2、3段階レベルを上げないといけない。周りからは『やれていたよ』って言われたんですけど、自分の中ではやばいなって思いました」

 佳史扶に衝撃を与えたのは、マッチアップした年下の選手だけではない。むしろ、トレーニング中に受けた衝撃のほうが大きかった。

【次ページ】 パリ世代についても「ポジションを奪いに行く側だと」

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