「休んでから1年半、その前もキツい中でやっていたのでトータルで3年弱ですか。自分でも何がきっかけで良くなったのかはわからないです。ただ、その頃もう一回吹っ切って、練習を投げ出してみたんですよ。もうオリンピックや世界陸上のための練習という意識を捨てて、散歩から始めようって。そう思ってやっていたら少しずつ歩けるようになってきたんです。練習で疲れるとまだ、以前の状態を思い出して怖くなることはありますけどね。今、気持ちはずっと前向きです」

まるで不死鳥のようですね

　今年に入ってから本格的な練習を再開し、5月の東日本実業団選手権では約3年ぶりとなるレース復帰を果たした。鈴木には過去にも長いブランクから復活し、世界王者に返り咲いた実績がある。その経験が根拠ある自信につながっているのだろう。

今年5月20日、東日本実業団選手権の男子5000m競歩で、約3年ぶりに競技会へと復帰した鈴木雄介　©JIJI PRESS

　まるで不死鳥のようですね。そう声をかけると、35歳になった鈴木はハハハと微笑んだ。

「よく言えば、そうですよね。今回はまだまだ途上なんですけど、またフォームを刷新して新しい自分を見せられたらなと思っています」

あまり気負わずに、もう一度、強い自分を見せたい

　今後の目標については、こう明言する。

「パリ五輪を目指してやっています。前回のケガの時も復活して金メダルまで行けたので、自信はありますね。まだ選考がどうなるかわからないですけど、できれば個人の20km代表を目指して、それがダメだったらチーム（パリ五輪は男女1名ずつで42.195kmを競う男女混合競歩種目が新設）の方で頑張りたいなと思ってます。年を重ねた分、その経験が生きると思うので。まあ、あまり気負わずに、まずはもう一度、強い自分を見せたいです」

©Yuki Suenaga

　気負いが空回りして36位に終わったロンドン、ケガで見送らざるを得なかったリオデジャネイロ、そして失意と悲嘆に暮れた東京。次回4度目の挑戦となるパリは、鈴木にとってどんな舞台になるのだろう。

　凱旋門の石畳に、力強い一歩は響くだろうか。

　＜前編もあわせてお読みください＞