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「坊主頭自体は問題ではない」髪型自由主義、慶応監督が語る“坊主頭”本当の問題点「『昔からこれが当たり前』という“思考停止”こそ罪深い」 

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森林貴彦

森林貴彦Takahiko Moribayashi

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photograph byNanae Suzuki

posted2023/08/15 06:00

「坊主頭自体は問題ではない」髪型自由主義、慶応監督が語る“坊主頭”本当の問題点「『昔からこれが当たり前』という“思考停止”こそ罪深い」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

初戦に勝利した慶応。脱帽すると選手たちの個性が表れ、その髪型が話題に。チームを率いる森林貴彦監督はどのような考えなのか?

自分で自分の幸せを理解していることも大事

 社会で活躍できる人の共通点として挙げられるのは、自分を客観視できること。自分なりのアイデアを持ち、自分自身の強みを知っていて、それを伸ばす努力ができる人は、社会に出てどんな仕事に就こうとも通用します。

 さらに付け加えれば、自分で自分の幸せを理解していることも大事です。これからの社会は多様性が重視され、人それぞれ追求する幸せが違う時代になっていきます。お金、家庭、仕事のやりがい……。多様な価値観の中で、何が自分を幸福にさせるかを分かっていないと、本当の幸せはつかめません。つまり、集団の中にいて満足していると、皆と一緒にいることで生まれる相対的な価値観ばかりを重視するようになり、ふと一人になったときに、本当の幸せが分からなくなってしまうのです。大学受験や就職活動、人生の転機となる場面で、それはより顕著に表れます。

勝つために練習は必要だが、大事なのは…

 そういう大人にならないように、高校生の段階から、人生における自分なりの物差しを持つ準備をさせないといけません。それはつまり、考える力が自然と身に付くことや、人生の選択肢が増えることにつながります。あえて大胆な言い方をさせてもらえば、勉強もその一つです。勉強することが将来の可能性を広げ、選択肢を増やしてくれます。もちろん勉強を始めるのは何歳からでも遅くありませんが、例えば30歳になってから一念発起して医学部に行くという人は非常に稀です。現実がそうであるなら、やはり高校生までに一定の勉強をして、論理性を高めたり、思考回路を柔軟にしたり、考え方を増やすことは非常に大切です。それが将来の可能性を広げ、選択肢を増やしてくれるのですから。

 高校野球において、勝利のために練習に時間を割くことは当然、必要です。しかし、本当にやりたいことが見えてくるのは大学生になってからという人が多いので、そのときに手遅れではない程度の勉強はしておかなければいけませんし、最低限、そのための努力は惜しまずにしておくべきです。

【次ページ】 社会人時代に「組織」を学ぶ

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