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「フェイクニュースではないのか?」記者席は騒然…イチローの“ヤンキース電撃トレード”とは何だったのか?「怖いですよ」当時38歳の決断

posted2023/07/22 11:00

 
「フェイクニュースではないのか?」記者席は騒然…イチローの“ヤンキース電撃トレード”とは何だったのか?「怖いですよ」当時38歳の決断<Number Web> photograph by JIJI PRESS

電撃的なトレードでマリナーズからヤンキースへと入団したイチロー。当時38歳での決断だった

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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JIJI PRESS

 今からもう11年前のことになる。

 2012年7月23日、米国西部時間午後3時。試合開始4時間前のことだった。マリナーズの本拠地セーフィコ・フィールド(現Tモバイル・パーク)の記者席が騒然となった。発端はひとつのツイッター情報だった。

「イチローがヤンキースへトレードされた」

「フェイクニュースを流したのではないか?」

 ヤンキース3連戦が始まる直前での騒動。当初は「また誰かがいい加減なフェイクニュースを流したのではないか」。そんな思いも駆け巡った。だが、一報の投稿者を確認した時点で事実であることを叩きつけられた。

 発信者はヤンキース専属放送局「YES Network」の看板記者、ジャック・カリー氏。彼の投稿から10分も経たずして両球団からはトレード発表のメールが届いた。午後3時半からはイチローが会見するとも記されている。受けた衝撃に気が動転すると同時に、あまりの手際の良さに感心したことを覚えている。

 マリナーズカラーの濃紺のネクタイを締め会見に臨んだイチローは言葉を選びながら、時折り涙を見せながら、ファンと関係者への謝辞を表し、移籍の背景を語った。

「オールスターブレークの間に自分なりに考え、出した結論は、20代前半の選手が多いこのチームの未来に来年以降、僕がいるべきではないのではないか、ということでした。そして、僕自身も環境を変えて刺激を求めたいという強い思いが、芽生えてきました。そうであるならば、出来るだけ早くチームを去ることが、チームにとっても僕にとっても、良いことなのではないか、という決断でした。今回の決断を受け入れてくださったマリナーズ球団に大変感謝しています」

『志願の移籍』を自ら公表したのだった。

【次ページ】 移籍会見から数時間後の“スタンディングオベーション”

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