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葛西純「新日本プロレスでこんなのアリ?」有刺鉄線、竹串、大流血…エル・デスペラードの“超刺激デスマッチ”でカメラマンが目にした熱狂 

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原壮史

原壮史Masashi Hara

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photograph byMasashi Hara

posted2023/07/09 17:00

葛西純「新日本プロレスでこんなのアリ?」有刺鉄線、竹串、大流血…エル・デスペラードの“超刺激デスマッチ”でカメラマンが目にした熱狂<Number Web> photograph by Masashi Hara

7月5日の後楽園ホール。ジョン・モクスリーとのシングルマッチで、凶器のチーズスライサーを手にするエル・デスペラード

 一度「楽しむ」に振り切った客席は、血を流して戦う選手たちの味方であり続け、自発的にその魅力にどっぷりと没入していった。

「キングオブスポーツ、新日本プロレスのリングでこんなことしてアリ?」

 試合後のリングでデスペラードからマイクを受け取った葛西がそう聞くと、大きな拍手が2人を包んだ。

「俺はデスマッチでは死なねえ」

 翌5日のデスペラードとモクスリーのシングルマッチでも、後楽園ホールは「アリ」という反応が支配的だった。前日とは異なり葛西が試合に出場しないため、より“新日ファンの濃度”が高まっていたにも関わらず、だ。

 場外で主導権を握ったモクスリーが、デスペラードが持ち込んだギターを奪い、フルスイングで脳天に叩きつける。エプロンでの攻防から、デスペラードが捨て身のバックドロップで場外の有刺鉄線ボードに落下する。さらにその有刺鉄線を両者が拳に巻きつけて殴り合ったかと思えば、竹串を仲良く「はんぶんこ」して相手の頭に突き刺し合う……。そんな光景を目の当たりにしても、観客は決して「ドン引き」することはなく、2人のレスラーへの熱狂と尊敬は増すばかりだった。

 シングルマッチはモクスリーが制した。左腕にカタカナで『プロレス』というタトゥーを刻んだ男は、血みどろのデスペラードに「俺はこれまで世界中のサディスティックで凶悪なレスラーたちとデスマッチをしてきたが、お前はそのなかでもトップに君臨すると言っておく」と最大級の賛辞を送った。

 敗れたデスペラードは「俺はデスマッチでは死なねえ」と言ってみせた。葛西との物語を通じて「生きるためにデスマッチをすること」が遺伝子レベルで刻まれた男は、“狂犬”とも“狂猿”とも異なる唯一無二のならず者として、見る者の人生を狂わせていくのだろう。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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