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「負けさせてやってよ…」大阪桐蔭の“連敗”を私はこう見た…「勝利が絶対」「練習試合の敗戦もニュースに」なぜ今“変わりそうな気がする”のか 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byNanae Suzuki

posted2023/06/06 06:00

「負けさせてやってよ…」大阪桐蔭の“連敗”を私はこう見た…「勝利が絶対」「練習試合の敗戦もニュースに」なぜ今“変わりそうな気がする”のか<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

昨秋の神宮大会の連覇から一転、センバツから春先にかけて敗けがつづく大阪桐蔭。今の状況をどう考えるべきか

「中田の時に甲子園に行けなくて、そのままの流れで秋もPL学園にコールド負け。これではヤバイな、と危機感がありました。周りの人からは、この3年間は、中田がいたから強かっただけで、中田がいなかったら、もとの桐蔭。また勝てない時代に入ると言われた。その中で秋に負けたので、1月の年明けに、ミーティングをしたんです。去年で勝てなかったから、普通にやっていては今年は勝てない。じゃ、残された道は、どれだけ練習できるか。去年日本一を目指していたけど、なれなかった。日本一を目指さないんだったら、目指さないやり方がある。甲子園に出るだけのやり方がある、と。日本一になるならば、とんでもない練習をやらなければならない。どちらを選ぶかを選手に決めさせたんです。それで、日本一になりたい、と。その覚悟があると選手たちは言ってきた。それであのチームは火が付いた」

 2008年、浅村のいた大阪桐蔭は17年ぶりに全国の頂点に立った。

 その後も、敗戦を機に一回り大きくなる、という流れは続いた。2012年に春夏連覇を果たしているが、前年の2011年のチームも「甲子園に出れば優勝候補」と呼ばれたチームだった。

 主将の広畑実や山足達也(オリックス)らに加え、2年生右腕・藤浪晋太郎(アスレチックス)が実質的にエースを務めて期待の高いチームだった。しかし、夏は大阪大会決勝戦で、石川慎吾(巨人)のいた東大阪大柏原に不覚をとった。

 藤浪が最終学年になった秋の大会でも大阪大会は突破したが、近畿大会の準々決勝で藤浪が炎上し天理に敗れている。「今年は勝負弱い」と言われたチームが、オフの期間に猛練習。翌年に春夏連覇を果たした。ほかに2014年の夏の優勝も、前年の敗戦を受けてのものだった。

連敗はプラスに捉えていい

 こう考えると、今年のチームが春以降に「敗けたこと」は大きな意味を持ってくるだろう。連覇を狙った春のセンバツは準決勝で報徳学園に逆転負け。春の大阪大会では決勝で金光大阪に、近畿大会も1回戦で智弁学園に敗れている。

 エース前田悠伍らが不在という戦力ダウンはあったにせよ、「勝利」が当たり前だったチームからすれば、敗戦が続いたことはプラスに捉えていいのではないか。

 昨秋の神宮大会の連覇から一転、センバツから春先の敗北。そして連敗報道。

「選手が揃わないとか、個が育っていない状況でも野球は勝っていかないといけない」

 大阪桐蔭から「絶対勝利」の箍が外れた。以前のように、魅力的な選手を育てながら、甲子園でも躍動する姿を想像できる「連敗」。そんな気がしている。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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