Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER

武豊にとっての最強牝馬は? ウオッカ、ベガにも乗ったので「難しいなあ…でもやっぱり、エアグルーヴ」〈54歳最年長GI制覇+80勝〉 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

photograph byMiki Fukano

posted2023/04/02 17:38

武豊にとっての最強牝馬は? ウオッカ、ベガにも乗ったので「難しいなあ…でもやっぱり、エアグルーヴ」〈54歳最年長GI制覇+80勝〉<Number Web> photograph by Miki Fukano

数々の名牝に騎乗してきた武豊。54歳にしてGI通算80勝を達成した天才騎手の騎乗に、桜花賞以降も目が離せない

「もう10年、いやそれ以上になりますね。最近ではエネイブル(英、19戦15勝。'17年、'18年凱旋門賞などGI11勝)が特に印象的ですし、トレヴ(仏、13戦9勝。'13年、'14年凱旋門賞などGI6勝)も凄かったです。ボクは'13年の凱旋門賞ではキズナに乗って、道中はトレヴの真後ろに付けてたんですが、直線であっという間に離されました。キズナも伸びていたのに、世界にはこんな馬もいるのか、とビックリしました。

 あとはゼニヤッタ(米、20戦19勝。'09年BCクラシックなどGI13勝)とか、ザルカヴァ(仏、7戦7勝。'08年凱旋門賞などGI5勝)も本当に強かった。南半球にもウィンクス(豪、43戦37勝。コックスプレート4連覇などGI25勝)や、ブラックキャビア(豪、25戦25勝。'12年ダイアモンドジュビリーSなどGI15勝)、マカイビーディーヴァ(豪、36戦15勝。メルボルンC3連覇などGI7勝)など、活躍期間が長い、強烈な牝馬がいましたね。

 ボクが騎手になったころは明らかに男馬の方が強かったし、ダービーとオークスの比較でも1秒から2秒、勝ちタイムが違っていましたよ。それが今は変わってきています。なんか、突出して強い牝馬が毎年のように出てきますからね。いまでも平均点なら男馬の方が強いと思うんですよ。ただ、いまの牝馬はトップがめっちゃ強くて、しかも息が長い」

エアメサイアはかわいかったな

――なぜ牝馬が強くなったんでしょう?

「ルール的に牝馬が多少有利な面は確かにあります。わかりやすいところなら斤量面。牡馬に対しての2kg減は、現状に見合っていないから見直すべきだという考えが世界的に出てきているほどです。レース選択が広いことも有利でしょう。牝馬限定に使えるし、牡牝混合も出走できる。ただ、そうしたメリットは大きいけど、昔からそうだったというのが不思議なところです。最近の牝馬の強さを説明したことにはなっていませんよね」

――牝馬には可愛らしさもありますよね?

「ボクらは、そういう感情は競走馬に持たないけど(笑)。でもエアメサイア('02年生まれ、父サンデーサイレンス、母エアデジャヴー、栗東・伊藤雄二厩舎)はかわいかったな。素直で従順な子で、顔も小さくて細くて牝馬らしくて。シーザリオ、ラインクラフトという強烈な面々が同期で、そういう強いのが相手だと、頑張って頑張ってやっぱり負けちゃうっていうところも、いま思えば可愛らしかった。個人的にも凄く好きで、お気に入りの一頭でした」

――12戦全てに騎乗して秋華賞など4勝。勝たせてあげたい気持ちが伝わってきていました。

【次ページ】  「天才の戦略」と称えられたシャダイカグラの出遅れ

BACK 1 2 3 4 NEXT
武豊
ファインモーション
伊藤雄二
エアメサイア
ベガ
シャダイカグラ
エアグルーヴ
シーキングザパール
宮路満英
ファレノプシス
ダンスパートナー
ウオッカ

競馬の前後の記事

ページトップ