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「打つ方は魂が抜けている。でもね…」甲斐拓也の恩師が語る“キャノン”だけじゃない武器とは? 世界一に必要な「“さじぃ”キャッチャー」

posted2023/03/20 17:02

 
「打つ方は魂が抜けている。でもね…」甲斐拓也の恩師が語る“キャノン”だけじゃない武器とは? 世界一に必要な「“さじぃ”キャッチャー」<Number Web> photograph by CTK Photo/AFLO

メキシコ戦で先発が予想される佐々木朗希(右)。前回登板したチェコ戦でマスクをかぶったのは甲斐拓也だ

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前田泰子

前田泰子Yasuko Maeda

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 WBC最後の決戦の地・マイアミ行きを決めた準々決勝イタリア戦。先発した大谷翔平は初回から気迫のこもったピッチングを披露し、全71球を投じた。それを女房役として受け止めたのは、甲斐拓也(30歳)だった。

 振り返れば大谷のWBC初登板となった中国戦のマスクも甲斐がかぶった。最高峰のメジャーリーグで活躍する大谷のボールは異次元。「受けたことのない軌道だった」というスライダーを軸に投球を組み立てた。

 第3戦のチェコ戦では21歳佐々木朗希をリード。8奪三振の投球を引き出し“令和の怪物”の世界デビューをアシストしている。世界規格の投手たちに信頼を得るキャッチャーに成長した教え子の姿を懐かしそうに見つめるのは、大分・楊志館の監督として甲斐の高校時代を指導した宮地弘明さんだ。

「見ていても、いっぱいいっぱいですね。リードするのに必死で打つ方は魂が抜けているみたい(笑)。でも拓也のいいところ、一生懸命にピッチャーをリードしているところがすごくありました」

 愛のあるイジりをこぼしながら、恩師は当時の甲斐の姿を思い出した。

「授業は休んでも練習は皆勤でした」

「根っからの野球小僧でしたね。ケガの治療なんかで病院に行くときも授業時間に行くんです。そして練習は最初から参加。授業は休んでも練習は皆勤でした」

 もともと捕手のセンスは抜群なうえによく練習をする子。宮地さんは直向きな少年の姿をよく覚えている。

 捕手としての能力をグングンと伸ばしていった甲斐だが、高校時代はバッティング技術が飛躍的に向上した時間でもあった。170センチ足らずの体格で高校通算本塁打は40本にのぼる。

「バッティングは荒かったけど体に力がありました。1年のときからパンチ力があるなと」

 宮地さんが覚えているのは、2年の春と夏に大会のシード権を得るために明豊と対戦した試合のこと。当時、明豊のエースは最速154キロをマークしていた今宮健太だった。

「今宮のまっすぐに対抗できるのは拓也しかいなかったんです」

 宮地さんは今宮攻略のために2年生の甲斐をクリーンナップに据えた。今やチームメイトである今宮との対戦をきっかけに“3番”が定位置になった

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