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「巨人ドラフト6位だった男」戸郷翔征の原点…他球団スカウト「ブン投げですからねぇ…」否定的評価をひっくり返し、侍ジャパンになるまで

posted2023/03/10 17:50

 
「巨人ドラフト6位だった男」戸郷翔征の原点…他球団スカウト「ブン投げですからねぇ…」否定的評価をひっくり返し、侍ジャパンになるまで<Number Web> photograph by KYODO

WBC中国戦7回。ピンチをしのいだ日本2番手の戸郷翔征(右)を迎える大谷翔平

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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WBC初戦となった中国戦、日本の2番手として登板した戸郷翔征(22歳)。今季巨人で5年目となる右腕は3回7奪三振1失点の力投でしっかりと役割を果たした。5年前、その戸郷が宮崎県選抜として、“超豪華メンバー”のU-18日本代表を抑え込んだ原点となる試合があった。

◆◆◆

「こんなピッチャー、甲子園で初めて見るなぁ」

 今季5年目の巨人・戸郷翔征(22歳)は宮崎で生まれ育って、延岡の聖心ウルスラ学園高から巨人に進んだ(2018年ドラフト6位)。プロ2年目からの3年間で、先発ローテーションの一角として30勝(22敗)。飄々と、淡々と、ポーカーフェイスのマウンドさばきで、コンスタントな仕事ぶりを続けながら、昨季は自己最高の12勝、防御率2.62をあげて、セ・リーグ奪三振王(154奪三振)にも輝いた。

 2018年のドラフト前、「戸郷が使えなくて、他の誰が使えるのか」……そんな論調で発信しても、なかなか誰も耳を貸してくれなかった。「そんな無名な人より、有名どころを語ってくれませんか」とまで言われて、提案を一蹴されたこともあった。

 私が、そこまで「聖心ウルスラ・戸郷翔征」に肩入れしていたのは、ある確信があったからだ。

 高校2年夏の甲子園(2017年)にエースで出場した時の印象が、「こんなピッチャー、甲子園で初めて見るなぁ……」。

 長身でやせていて……細い体なのに、全身の運動量抜群の投球フォーム。今よりちょっと腕の位置は低かったろうか。サイド気味の角度で非力感はまるでなく、むしろパワフル。2年の夏にあの体で、サイドからアベレージ130キロ後半なら、来年の夏は間違いなく攻略困難な快腕になる……勝手に「九州No.1の素材」と位置付けて楽しみにしていたら、予選で消えてしまったから、ええっ!と力が抜けた。

吉田、根尾、藤原…逸材ばかりのU-18日本代表

 その2018年の夏の甲子園が終わった頃、宮崎で開催される「U-18アジア選手権」の壮行試合が行われると聞いた。U-18日本代表の対戦相手「宮崎県選抜」に戸郷翔征がその名を連ねているのを知って、この時とばかり、サンマリンスタジアム宮崎に飛んで行った。

 ジャパンの顔ぶれもすごかった。

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