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「1次リーグ突破も危うい」の6年前…沈黙の“WBC直前ミーティング”で青木宣親が立ち上がって…いま明かされる「試合までのリアル」

posted2023/03/08 17:00

 
「1次リーグ突破も危うい」の6年前…沈黙の“WBC直前ミーティング”で青木宣親が立ち上がって…いま明かされる「試合までのリアル」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

大一番のWBC「初戦」。その裏側にはどんなドラマがあるのだろうか。前回大会メンバーが明かす

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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「史上最強」と言われる日本代表メンバーで挑むワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の開幕が迫る。特別な緊張感と重圧の中で臨む大一番の「初戦」。その裏側にはどんなドラマがあるのだろうか。2017年の前回大会メンバーの証言から、「侍ジャパン」の知られざる秘話を探った。

 2017年3月7日午前。

 都内ホテルの一室で始まった「野手ミーティング」の空気は張り詰めていた。筒香嘉智、坂本勇人、中田翔、山田哲人、鈴木誠也……。歴戦の雄も、この時ばかりは頬をこわばらせる。無理もない。初陣への出発時間までわずか。強敵・キューバ代表との戦いの一日は、すでに始まっているのだ。

青木宣親の回想「直前に負けて雰囲気が…」

 対戦相手の分析などの説明が終わっても、選手たちの緊張感は解けない。気まずい沈黙を破るように、立ち上がり口を開いた選手がいた。メジャーリーガーとしてただ一人チームに参加していた青木宣親(当時アストロズ)だ。

「Prove yourself right! 自分たちの正しさを証明しよう」

 前年の2016年、マリナーズのチームメートだったロビンソン・カノの言葉だった。

 6年たった今、青木が当時の思いを明かす。

「自分を信じよう、ということを伝えたかったんです。試合の前にチームを鼓舞するときなどにカノがよく口にしていたんですけれど、凄くいい言葉だなと自分の中に残っていた。当時の代表チームは、直前の壮行試合で負けたりして雰囲気が少し悪かったんですよね。僕はチーム最年長だったし唯一のメジャーリーガーでもあった。みんなの意識を統一して、チームが一つになってくれればと思っていました」

 常設化された「侍ジャパン」の初代監督として就任した小久保裕紀のもと、選手たちは約3年半にわたりWBCを目指しチームを作ってきた。しかし、大会合宿前の2月始めに投打の柱として期待されていた大谷翔平(当時日本ハム)が故障のため出場を辞退。開幕直前の3月4日には、司令塔の嶋基宏(当時楽天)がやはり故障で離脱していた。

“最弱チーム”と言われて…直前MTGの中身

 WBCに向けた直前の試合では、ソフトバンクに0-2、阪神に2-4で敗れるなど、5試合を2勝3敗と負け越した。“史上最弱チーム”と揶揄され、1次リーグ突破も危ういのではないかとの声も出ていた。

 開幕直前の3月2日になってチームに合流した青木は、そんな若いチームが抱える不安を感じ取っていた。自身はいずれも世界一となった2006年、2009年大会に主力として参加。その背中でチームを引っ張ったイチローの姿を見ていた。

【次ページ】 「中田翔はバットを持って目を閉じて…」

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