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「今でも鮮明に覚えています」WBC日本代表の守護神だった牧田和久38歳が忘れられない“あの1アウト”「予選ラウンド後の“燃え尽き”に要注意」 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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photograph byL)Yuki Suenaga、R)Getty Images

posted2023/02/28 17:00

「今でも鮮明に覚えています」WBC日本代表の守護神だった牧田和久38歳が忘れられない“あの1アウト”「予選ラウンド後の“燃え尽き”に要注意」<Number Web> photograph by L)Yuki Suenaga、R)Getty Images

日本代表の守護神としてWBC2大会を経験した牧田和久氏が語る

「投げたくない…」ブルペンの異様な雰囲気

――当時は同じくチームでは先発を担っていた田中将大や涌井秀章、杉内俊哉、内海哲也らも大会中リリーフに回っていた。錚々たる顔ぶれが揃った日本代表のブルペンはどんな雰囲気だったのだろう。

牧田 試合を見ながら、みんな投げたくない、投げたくない、って言っていましたね。当時巨人でリリーフとしてフル回転していた山口(鉄也)さんですら『はぁ……マジかぁ』とため息をついていたのが印象に残っています。ただやはり一流の投手が集まっているので、特別なことはなく、それぞれが自分のペースやルーティンを大切に調整していたと思います。

――第2ラウンド1回戦の台湾戦では、3−3の同点の9回から登板し、無死一塁でピッチャー前の小フライを気迫のダイビングキャッチ。延長10回の勝ち越しを呼び込んだビッグプレーだった。

牧田 後々冷静に考えると、あそこの場面は普通にショートバウンドで捕球して、ファーストに投げた後セカンドで挟殺にできればよかった。でもなぜか無意識にダイブしていましたね。昔からピッチャー前の小フライはつい行きたくなってしまうんですが、あの時は日本を背負っているという思いもありました。実は、昨年台湾リーグに行った時、現地の方からこの時のことをよく言われたんです。台湾戦でダイビングキャッチしたあの牧田だ!って。やはり国際試合は凄く注目度が高いんだなと後になって実感しました。

WBCで牧田が手ごたえを感じたボール

――日本は準決勝でプエルトリコに1−3と黒星を喫して敗退。悔しい思いをしたが、牧田さんは3試合を無失点&5奪三振。国際大会におけるアンダースローの強みを実感したのでは?

牧田 一発勝負だと、アンダースローの投手はなかなか攻略できないところがあるとは感じました。2006年大会では渡辺俊介さんが先発でも活躍されていましたが、自分の場合はリリーフだったので、打者からすると下から出てくるボールに慣れる間もなく対戦が終わってしまうという意味でさらに強みがあったかもしれません。効果的だと感じたのはハイボールですね。日本の打者相手には見極められてしまうんですが、外国人打者は高めの真っすぐが来るとどうしても手が出る。高めの球で空振りを取れたのが印象的でした。

――4年後の2017年大会にも再び代表入り。2大会連続で代表に選出された投手陣で唯一の存在だった。やはり抑えを任され、初戦のキューバ戦では9回満塁のピンチでデスパイネ(当時ソフトバンク)を見逃し三振。あの場面はどんな心境で?

牧田 あの時もブルペンではマイナスの言葉や緊張を全て吐き出していたんですが、マウンドに上がってからはゾーンに入るというか、集中して投げられました。キューバ打線は一発があるので、怖いなと思うんですけど、怖いと思うとその通りの結果になってしまう。打てるわけがないだろ、というくらいの気持ちで開き直っていきましたね。

【次ページ】 鮮明に覚えている「2次ラウンドのオランダ戦」

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