「止めるところだったり、パススピードがまだまだ足りない」

　エースストライカーとして今大会3ゴールを挙げ、得点ランキング1位タイとなった今井は、平が初めて練習にやってきた日のことをよく覚えていた。いきなりの指摘に選手たちは困惑したようだが、トライアングルパスなどのトレーニングによって得られる成果を日々感じられたことで、自信を深めていった。

　続けて、今井が証言する。

決勝戦でもオウンゴールを誘発させた岡山学芸館FW今井拓人　©︎Kiichi Matsumoto

「全体的なポジショニングが変わりました。どんなに押し込まれても奪った後にベクトルを一気に前に向けることができるし、常に僕の特徴を生かしてくれる鋭いボールが後方から来るので、昨年以上にゴールに近い位置でプレーできている手応えがある」

　さらに平は、今井を始めとするアタッカー陣に「速いボールがくれば、そこで足元に収めるだけでなく、そのスピードを利用してシンプルにターンすることができるし、ワンタッチで自分の優位な形で次のプレーができるぞ」と助言していた。このアドバイスをもとにパスの受け方を工夫し、反復練習をした今井は、選手権で何度もゴールに向かって仕掛けることができた。それが前述の結果につながったのだろう。

胴上げしようと高原監督を囲む岡山学芸館イレブン　©︎Kiichi Matsumoto

　岡山学芸館が全員で掴んだ栄冠。それは決して勢いだけでなし得たものではない。

　地道にベースを作り上げてきた高原監督と、それを支えたコーチ陣と共に志を持って岡山学芸館の門を叩いた選手たちの努力の積み重ね、そして名将が持ち続けた選手育成の信念というラストピースが組み合わさった賜物であった。

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