「持たれている」ではなく「持たせている」

　システムは5-4-1で、3試合通じて初めて試合開始から5バックを敷きました。前2試合の反省と収穫を生かしたことで、3試合のなかでもっとも5-4-1の守り方が明確になっていたと感じます。

　FWラインからDFラインまでの3ラインの距離がコンパクトになっており、最終ラインも高すぎず低すぎずで、選手同士の横と縦のつながりをつねに意識してコントロールされ、全員が集中してコミュニケーションを取り続けていました。それによって、ソリッドなブロックが形成されていました。

　横パスはある程度させてもいいとの判断で、全員がスライドして距離感を保つ。一番の狙いは縦パスで、縦パスをインターセプトするかタイトな守備で前向きに奪い、そこからショートカウンターでゴールを奪うことを狙いにしていたと思います。

ダニ・オルモのパスコースを制限する伊東純也　©Kiichi Matsumoto/JMPA

　グループステージは中3日のスケジュールで、コスタリカ戦の翌日は先発メンバーが軽めのメニューになります。スペイン戦に向けての準備期間は、実質的に2日でした。また、次の対戦相手を想定してトレーニングしても、実際に試合が始まって相手の質を体感しなければ分からないものがあります。そういうなかでも守り方が整備されていたのは、ドイツ戦とコスタリカ戦の積み重ねが価値を持っていたのでしょう。

　キックオフ直後から日本は、ミドルゾーンで3ラインをコンパクトにした状態にセットし、スペインに「ボールを持たれている、回されている」ではなく、「ボールを持たせている、回させている」というマインドで臨みました。機を見て前線がスイッチを入れたら後ろも連動してハイプレスをかけ、ボールを奪ってショートカウンターで攻め込む、という形を取りました。

　前半7分、前線からのハイプレスをきっかけにショートカウンターを発動し、伊東純也がシュートまで持ち込んだシーンは、狙いどおりだったのではないでしょうか。しかし、直後の11分に失点してしまい、その後もボールを保持しながら2点目を狙いにくるスペインに対してゴール前まで行くシーンは少なく、奪ってもすぐ奪われたりと、なかなか攻めることができなかった。

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