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石川祐希は“あの激闘フランス戦”で何を感じたのか?「もちろん狙いました」「この先は、強い人間だけが残っていくと思います」 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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posted2022/09/20 11:00

石川祐希は“あの激闘フランス戦”で何を感じたのか?「もちろん狙いました」「この先は、強い人間だけが残っていくと思います」<Number Web> photograph by FIVB

男子バレー世界選手権・決勝トーナメント1回戦で、強豪フランスと激闘を繰り広げた日本代表。イタリアへ旅立つ前に、キャプテン石川祐希に試合を振り返ってもらった

 フランス戦の激闘からわずか10日あまり。帰国から1週間ほどの短い日本滞在を経て、石川は渡欧し、ミラノで3シーズン目、イタリアで8度目となる新たなクラブシーズンに臨む。

 出発前日の15日に行われたオンライン会見でも、数字を交えながら自らがクリアすべき具体的な目標を掲げると共に、幾度となく繰り返したのが「今年は勝負のシーズンになる」という言葉。

 その背景に存在する理由と、予感。石川には、抱く期待がある。

「東京オリンピック、イタリアでの昨シーズン、ネーションズリーグ、世界選手権。僕が乗り越えないといけない壁が、次から次にきていると思うんです。オリンピックで負けてすごく悔しかったけれど、去年のクラブシーズンでモデナに負けてプレーオフを逃した時もめちゃくちゃ悔しかった。でもそれ以上に、今回の世界選手権はもっともっと悔しくて。試合をするごとに、悔しさも増えているのは、乗り越えた先にまたちゃんと、新しい壁があるから。

 さらにステップアップするためには強豪チームや強豪国に勝つしかないし、そのためのチャンスは確実に増えている。待っているだけじゃなく、自分がつかみに行っているからこそ、何かものすごく大きく変わるきっかけがあるんじゃないか、と思うし、それをものにできるか、できないか。今は本当にそういう時で、だからこそカギになるシーズンだと感じています」

「強い人間だけが残っていくと思います」

 フランス戦で、嫌というほど味わった「1点」の重み。

 おそらくそれは、石川だけに限らない。あの場で日の丸をつけ、日本代表として戦ったすべての選手が同じであるはず、と石川はフランス戦での決勝点となった最後の「1点」を回顧する。

「西田選手が打った瞬間、その前に決めた1本と同じような軌道で、いいスパイクだったので、僕は『決まった』と思ってガッツポーズしました。でも、そのボールをフランスはミドルの選手が片手でつないで、しかもそれがセッターに返ったんです。技術なのか、運なのかはわかりません。でももうそうなったら、フランスは(前衛にいた)ガペだよね、ガペに打たせるよね、という状況で、最後の1点は拍手するしかない素晴らしいスパイクでした。

 僕がこの試合の敗因を自分のサーブミスだと思っているように、西田選手は『自分が決められなかったことが敗因』と思っているかもしれないし、あの場にいた1人1人に、いろんな考えや答えがあるはず。それぞれが『個』の力をつける、レベルアップしなければならないと実感させられた。フランス戦は、この先の日本代表が強くなっていくための“きっかけ”になるであろう試合でした」

 負けた。悔しい。惜しかった。

 2年後のパリで世界王者を狙う相手に敗れてもなお、ただそれだけで終わる選手など、今の日本代表には1人もいない。

 自らのサーブで負けた、と言う彼もしかり。

「この先は、強い人間だけが残っていくと思います」

 次は必ず――。勝利をつかむ1点は、各々が自らの手で取りに行く。フランス戦は今季のエンディングではなく、2年後のパリへと続くプロローグに過ぎない。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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