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山田陽翔(近江)も愛用している…大阪桐蔭・前田悠伍が“流行らせた”投手用グラブとは? 野球用品店「オーダーが殺到しています」 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byHideki Sugiyama

posted2022/09/03 11:01

山田陽翔(近江)も愛用している…大阪桐蔭・前田悠伍が“流行らせた”投手用グラブとは? 野球用品店「オーダーが殺到しています」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

大阪桐蔭の2年生左腕・前田悠伍。彼の使うグラブが『前田型』としてトレンドになっている

 あと、『エールストーリー』という内野グラブ専門のブランドもあるんです。じつはCHIAKIもエールストーリーも、起業した方は、もともとアトムズというグラブメーカーで働いていたんです。グラブ作りの聖地、奈良の小さな硬式グラブのブランドです。今、アトムズは、アトムズグループというブランドの集合体をつくっていて、両ブランドは、その中のいちブランドでもあります。

――つまり、アトムズグループという『グラブ商店街』があって、そこにいくつかのグラブ店が軒を連ねている、というようなイメージでいいんですかね。

 はい。今、7つのブランドがグループに入っています。大阪桐蔭のエース、川原嗣貴投手が使っていた『トレジャー』というグラブも、アトムズグループです。高良(たから)さんという職人がつくっているので、トレジャー(宝)だそうです。今、そんな独立系ブランドの中で、業界が大注目しているグラブがありまして。ゴリラ(ごりら印の野球道具)というブランドの投手用グラブです。去年、都市対抗で優勝した社会人野球の強豪・東京ガスの投手陣がこぞって使っていて、そこから『あのグラブは何だ?』と評判になったんです。元独立リーガーで、柔道整復師の資格を持っている人が起業したブランドなので、体の連動性を意識したグラブをつくっているんです。つまり、体をうまく使うのに非常に合理的な形をしている。オーバースロー型、サイドハンド型、その中間型の三種類の型があって、このグラブと使うとパフォーマンス力がアップし、球速が上がるというのが売りです。東京ガスの投手をはじめ、実際、そういう選手がいるんですよ。ゴリラのグラブは6万円台と少々割高なのですが、うちの店では8月だけで7、8個も売れてます。うちの人気1、2を争うローリングスとミズノの投手用グラブは10個前後売れたので、そこには及びませんが、メーカー露出に雲泥の差がある中でこの差なら大健闘ですよ。甲子園では、まだ見かけませんでしたが、近い将来、ゴリラ旋風が巻き起こる可能性はありますね。

――ひと昔前までは、甲子園常連校になると、どの選手も同じ大手メーカーのグラブを使っている印象がありましたが、そこは変わってきているんですね。

 おっしゃる通り、甲子園出場校の選手が使う用具メーカーには『大人の事情』が見え隠れしているものですが、最近は、自分の目でちゃんと選んでいる感じがしますよね。ちょっと前までは、甲子園に出ると(使い慣れたグラブでないと影響が出やすい)内野手まで新品のグラブを使っていましたから。あれは、さすがにやり過ぎだろと思っていました。でも、この夏は、ほとんどの内野手が使い古したものを使っていた印象ですね。そのあたりは健全になってきたなという印象を持ちました。素敵なことだな、と。

<前編から続く>

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