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春夏連覇はなぜ難しいのか? 「要因のひとつは油断と慢心をなくせないこと」帝京前監督・前田三夫が明かす30年前の“まさかの敗戦”から学んだ教訓
posted2022/08/20 17:00
text by
前田三夫Mitsuo Maeda
photograph by
Yuji Ueno
前田三夫氏は著書『いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方』で、春夏連覇を目指した1992年帝京で何が起きていたかを明かしている(全3回の1回目/#2、#3へ)。
春夏連覇を達成するのが難しい要因のひとつに、「油断」と「慢心」をなくせないことが挙げられます。力のあるチームが優勝したことで、その経験を自信に変えていき、維持していくことは大切です。同時に、「いつも通りの力を発揮すれば勝てる」とばかりに、対戦相手のチームの分析や対策などをおろそかにしてしまうと、足元をすくわれてしまいます。
強いチームに発生する慢心との戦い
このことを学んだのは1992年のチームでした。この年のセンバツで帝京は、はじめて春の優勝を果たしました。決勝の東海大相模戦では、3対2で帝京リードの9回裏二死一、二塁という場面で、相手打者にライト前ヒットを打たれたものの、ライトからの好返球でホーム寸前に二塁走者をタッチアウト、そのまま試合終了という劇的な幕切れで試合は終わりました。80年、85年と2度の準優勝を経ての春の栄冠だっただけに、喜びもひとしおでした。
この年の中心はエースで4番を打っていた三澤興一(後に巨人―近鉄―ヤクルト、現・巨人二軍投手コーチ)でした。彼のピッチングで特徴的なのが、「球質が重いこと」です。
帝京ではバント守備の練習のときは、投手が実際にマウンドに上がって、5~6割の力でストレートのストライクを投げてもらい、監督である私がバッターボックスに立ってバントをするというスタイルをとっていました。三澤が投げたボールをバントすると、いつもより半分程度の球威のストレートであるにもかかわらず、「ズドン」と、まるで大きな鉛を受け止めたような衝撃が両手に走るのです。彼が登板した試合で打者がバッターボックスに立つと、どん詰まりの内野ゴロを打つことがしょっちゅうあったのは、重い球質によるところが大きかったのです。