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「選手たちの家族の分も人生背負ってるから…」沖縄でサッカーを続ける“黄金世代”高原直泰43歳、会社社長になって性格も変わった 

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雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byNanae Suzuki

posted2022/07/09 11:03

「選手たちの家族の分も人生背負ってるから…」沖縄でサッカーを続ける“黄金世代”高原直泰43歳、会社社長になって性格も変わった<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

元サッカー日本代表・高原直泰(43歳)。自ら立ち上げた沖縄SVで選手兼監督兼代表を務める

「いや、別にそういうわけじゃないです」と高原は首を横に振った後、「とにかくね、考えること」と答えた。

「選手に言っているのは、単純にパスを受け手の右足につけるのか左足につけるのか、自分がどのポジションにいれば次に繋がるのかを、とにかく考えろ、と。それだけですよ。それがわからない選手が多いんです」

 ポジショニングの意図、1本のパスの理由を問いかけると、多くの選手が「なんとなく」としか答えられないのだという。

「それじゃダメなんです。自分で考えなきゃ。ここでボールを受けたら何ができるのか、自分がどういうことを発信したいのか。しっかり考えて、次のアクションを起こしていくこと。それが大事なんだと選手には伝えています」

「俺はオシム、大好きですからね」

 “考えるサッカー”とは、まるで5月に亡くなった元日本代表監督イビチャ・オシムの言葉を聞くようだ。実際にオシムの本を読むように勧められたという選手の声も聞いた。

「俺はオシム、大好きですからね。むしろオシムさんと共鳴してました。俺が勝手に感じていただけですけど(笑)。一緒にやったのは代表での短い期間だけだったけど、(選手と監督として)一番合ったというか、サッカー観みたいのがピタッと合ったのがオシムさんでした。だから影響を受けたとも言えるのかもしれない」

 ピッチ上には無限のシチュエーションが現れるからこそ、練習で行うべきはパターンの暗記ではなく、思考を鍛えてプレーに意志を込める力を養うこと。

 その手段として高原は徹底的に映像を使う。映像で客観的に見せておいて、こんなふうに問いかける。

 高原「どう?」

 選手「……」

 高原「だろ?」

「それだけなんです」と言って高原はニヤっとした。多くを語る必要はない。選手の思考回路にスイッチを入れるには、たったの二言、ひらがな4文字でいいらしい。

「あまり人と関わらずにいる方が合ってる」

「やってほしいことは単純で、そんな難しいことは要求してません。選手からしたら、こんなことでいいんですか?って。俺からすれば、そんなことでいいんだよと(笑)。だってできてないんだから。J2やJ3でプレーしてきた選手でも分かってない選手がほとんどです。ただ、賢い選手はそれを理解してプレーに反映できる。そういうところで、いい選手かどうかの差がつきますね」

 そして話は最初に戻る。

【次ページ】 「あまり人と関わらずにいる方が合ってる」

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