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日本代表でも見たい「ゲームを変える堀江」“先発1試合”でリーグワンMVPに輝いた堀江翔太(36歳)の止まらない進化とは? 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/06/01 11:01

日本代表でも見たい「ゲームを変える堀江」“先発1試合”でリーグワンMVPに輝いた堀江翔太(36歳)の止まらない進化とは?<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

埼玉ワイルドナイツの優勝に貢献した堀江翔太(36歳)。リーグワン初代MVPに選出された

 埼玉のディフェンスは高度なコミュニケーションに支えられている。「約束事自体はシンプルですよ」と選手たちは口を揃えるが、その実行プロセスは精緻だ。

 相手との人数の違い、相手アタック選手の並び方や顔ぶれ(目の前にいるDFは足の速いBKか? そうでもないFWか? など)、地域や点差、それらの要因も踏まえて、そのときどきの最適解をチームで共有し、遂行する。

 ロビー・ディーンズ監督はじめコーチングスタッフも「正解」を与えて遵守させるのではなく、そのときに応じた最適解をどう選ぶかを選手たちに問いかけ、考えさせ、そのプロセスを共有させる。そのコミュニケーションがおろそかになっているとき、コールせずにひとりの判断で行動しようとしているとき、堀江はすぐに、ベンチからでも指摘する。そしてピッチに入れば、指摘しつつ自ら体を張り、ボールを追い、八面六臂の奮闘でチームを勝利に導くのだ。

 アワードの表彰式で、堀江は言った。

「僕もプレーできるのはあと数年しかないと思いますが、天井を見ずに、悔いが残らないよう努力したい。でも今は、30歳のときよりも動けるようになっています。体が楽になっています」

15年W杯前に手術を決断「40歳まで」

 ちょうど30歳になる頃、堀江は選手としての転機を迎えた。11年W杯で世界との差を思い知り、スーパーラグビーへの挑戦を決意し、オタゴ代表からレベルズそして帰国すればエディー・ジョーンズ率いる日本代表とパナソニックでのプレー。休む間のないハードワークを何年も続けた結果、首のヘルニアを患い、握力は9kgまで低下した。

 15年W杯を前に堀江は手術に踏み切った。そのとき出会ったのがトレーナーの佐藤義人さんだった。自身もサッカー選手として多くのケガを克服してきた経験から独自のトレーニング・コンディショニング理論を開発していた佐藤さんのトレーニングプログラムで、堀江は覚醒したという。

「40歳までプレーしたいんですと言ったら佐藤さんは『できるよ』と言ってくれた。実際、佐藤さんのもとでトレーニングをして、自分でも体の使いかた、動かし方が以前とは全然変わった。止まった状態からの瞬発力、ジャッカルに入るスピードとか、前よりも全然上がりました。30歳の頃のプレー映像を見ると、恥ずかしい(笑)」

【次ページ】 チームへの感謝「僕は特別扱いしてもらっている」

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