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日本代表でも見たい「ゲームを変える堀江」“先発1試合”でリーグワンMVPに輝いた堀江翔太(36歳)の止まらない進化とは?

posted2022/06/01 11:01

 
日本代表でも見たい「ゲームを変える堀江」“先発1試合”でリーグワンMVPに輝いた堀江翔太(36歳)の止まらない進化とは?<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

埼玉ワイルドナイツの優勝に貢献した堀江翔太(36歳)。リーグワン初代MVPに選出された

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph by

Kiichi Matsumoto

「こんなに素晴らしい選手がたくさんいる中で、僕が選ばれるなんて、恐れ多くて後ろを見ることができません」

 5月30日に行われたリーグワン・アワード。ベストフィフティーンが発表されて、当日欠席した2人を除く13人が並んだ壇上で、リーグワン初代MVPが発表された。玉塚元一理事長が「発表しちゃっていいんですか?」とためらいながら読み上げた名前は「堀江翔太」。名を呼ばれた本人は、遠慮気味に歩み出て、トロフィーを受け取り、コメントを求められると、冒頭の言葉を発したのだ。

MVP選出「先発は1試合のみ」

 MVP選出は異例だったかもしれない。

 今季、埼玉ワイルドナイツが戦った16試合のうち、堀江が先発したのは開幕初戦となった第3節の横浜戦のみ。以降の15試合はすべてリザーブとして、後半途中からの出場だった。同じポジションにチームのキャプテン坂手淳史がいたためでもあるが、堀江はベンチスタートの背番号「16」が代名詞だった。

 シーズンMVPに選ばれるのは、FWであれBKであれ80分間、チームの先頭で体を張る選手が相場だ。2003年度の初代トップリーグMVPを受賞した元木由記雄(神戸製鋼)を筆頭に、歴代MVPは冨岡鉄平、大野均、デイビッド・ヒル(すべて東芝)、小野澤宏時、ジョージ・スミス、松島幸太朗(すべてサントリー)、ベリック・バーンズ(パナソニック)、ダン・カーター(神戸製鋼)……といずれも「先発完投型」でゲームを作る、トライを取る、タックルにセットプレーに体を張り続ける選手たちだった。堀江自身、三洋電機時代の2010年度とパナソニック時代の2015年度にMVPを受賞したが、どちらのシーズンも多くの試合に背番号「2」をつけて先発出場していた。

 だが2010年代に入り、ラグビーのトレーニング理論、戦術理論が進化し、FWの消耗度があがり、特にFW第1列は途中交代が当然の時代になった。リザーブ(控え)はチームによって「インパクト」(衝撃を与える)「フィニッシャー」(終わらせる)「ブースター」(加速させる)など、よりポジティブな名前を与えられるようになった。

 そして、今季の堀江は、リザーブの概念を決定的に変えた。

【次ページ】 リザーブに堀江がいる「恐怖」

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堀江翔太
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