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「あのボレーはジダン自身を救ったんだ」「とにかくシャイで…」銀河系マドリー指揮官と同僚が語る“CL史上最高ゴールと天才MFの素顔”

posted2022/05/28 06:00

 
「あのボレーはジダン自身を救ったんだ」「とにかくシャイで…」銀河系マドリー指揮官と同僚が語る“CL史上最高ゴールと天才MFの素顔”<Number Web> photograph by Daisuke Nakashima

『アサドール』店内。無数の写真の中に「伝説のボレー」の一枚が

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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photograph by

Daisuke Nakashima

CL史上最高のシュート。2002年のジダンの「あのボレー」は、何故これほど深く我々の記憶に刻み込まれているのだろう。伝説の瞬間を目撃した人々を採して、マドリードを訪ねた。01-02シーズンのCLファイナルで生まれたスーパーゴールの記憶について追った記事を無料公開します<初出:Sports Graphic Number 921号(2017年2月9日発売)、肩書などはすべて当時。全2回/#2も>

 サンティアゴ・ベルナベウから北西へ10分ばかり進んだインファンタ・メルセデス通りの角に、一軒のバスク料理店がある。

『アサドール・ドノスティアッラ』。

 緑に覆われた重い扉を開けると、肉を焼く匂いが漂ってくる。店の名物は、バスク地方で食べられる高級部位、チュレトンだ。焼けた石皿の上に載せられた赤い塊が、元気よく音を立てていた。

 店内の白い壁には、古い写真がたくさん飾られてある。

 フィーゴには色気が漂っている。ロベルト・カルロスが、店主と抱き合う写真がある。照れたような表情のジダン。ロナウドにラウールもいる。目につくのは、ガラクティコ(銀河系)と呼ばれた、スター選手で彩られたレアル・マドリーの面々だ。

クリスマスも、ジダンが家族でいらっしゃって

 一度でもあの白いユニフォームに袖を通し、ベルナベウのピッチを踏んだ選手であれば、ここのチュレトンを必ず食べることになる。レアル・マドリー御用達の店だ。

「先代が作った店なんです。昔からマドリーの選手に贔屓にしてもらって」

 現オーナーのペドロが言う。

「クリスマスも、ジダンが家族でいらっしゃって。ちょうどクラブワールドカップで優勝した後で、年明けにも来ていただきました。あれだけの人なのに、いつも謙虚で。監督としても、きっと歴史に残ります」

 白い壁をぎっしりと埋める写真の中に、15年前に撮られた、1枚の写真があった。

 ジダンが体を傾け、今まさにボールをインパクトしようとしている。目は、ボールをしっかりと捉えている。この数秒後、ハンプデン・パークは歓喜に包まれた。それからは歴史だ。

【次ページ】 あの決勝の後の祝勝会のことを父から聞きました

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