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前田大然「来ると決めた一番の理由はポステコグルー監督」 マリノスから続く縁がセルティック加入の決め手だった
posted2022/06/26 18:01
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
Alan Harvey/Getty Images(Celtic FC)
時計の針はもうすぐ後半ロスタイムをさそうとしている。
セルティックパークを埋めた緑の連中には勝利の歌の準備ができている。スコアは大差をつけている。数分後には勝ち点3が積み上げられるだろう。
それでも、ピッチに目を移すと前田大然が走っている。最終ラインでボールを転がす、屈強だがボール扱いのあやういストッパーに獰猛なプレスをかける。試合開始直後と変わらない勢い。獲物をめがけ飛び込んでいくその背中に、観客は盛大な拍手を送るのだった。
守備時には相手へのプレス、ボール保持時には積極的なランでスペースへ。チーム随一の脚力を活かした走りは、わずか半年でセルティックパークの名物となった。
走ることについて聞いた。
「違うところで全力で走ってたら、ゆくゆくは自分のところにラッキーボールが来るもの。僕はそう考えています。この姿勢でこれからもやっていきたい。ゴールというのは、僕の中では取れるときはとれるし、取れないときはとれないもの。そう割り切っている。ゴールには運の要素もあるから、点が取れない時もチームのために戦うことが大事だと」
改めて、得点にこだわろう
前田は1月にセルティックへやってきた。1シーズン目は21試合7得点。点が取れなかった時期には批判も浴びたが、今では彼がスプリントを見せるとスタンドの一部が沸くようになった。
スコットランドには走り、身を粉にして戦う選手を愛する文化がある。
「スピードがある選手というのは、どこにいっても気に入られると思っています。僕はそのスピードをどんどん出していかないと。今よりも、もっと出したい。圧倒的なスピードを見せる。まだまだ、見せられていないと思っているので。
こっちは日本より難しい部分もあります。ディフェンダーはでかくて、強くて、速い。ピッチコンディションも違う。それに、点を取らないと色々と言われますし、逆に取ればさすが、となる。改めて、得点にこだわろうと思いましたね。これはポルトガルの時にも感じたことですが」
前田は2019ー2020シーズンにポルトガルのマリティモで初めての海外生活を経験している。大西洋に浮かぶ島、マデイラでの日常は想像を上回るものだった。そんな経験をもつ前田にとって、グラスゴーは何不自由ない大都会に思えた。