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「最初は“俊輔、俊輔”と」「他の日本人が来たときに…」古橋亨梧がセルティックで信頼と愛情を得たワケ《日本人4人連続インタビュー》
posted2022/06/26 18:00
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
REUTERS/AFLO(Celtic FC)
古橋亨梧がグラスゴーにやってきた昨夏、グラスゴーで日本人サッカー選手といえば中村俊輔だった。
2005年から4季プレーした中村は国内リーグ、チャンピオンズリーグで印象的な活躍を見せ、07年には年間MVPを受賞するなど、北の地の人々の心に今も残り続けている。
かつての中村のような活躍を見せてくれるのか。久しぶりに日本人を迎え入れたセルティックファンはそんな淡い期待を抱いていた。
ハードルはずいぶんと高かった。しかし彼らが古橋の名を叫び、地響きに似た声援を送るまでにはほとんど時間はかからなかった。
神戸に来てからは、アンドレスたちと……
「やれる自信はありました」と古橋は言う。神戸で経験を積みゴールを重ねた。日本代表にも選ばれ、結果もついてきた。セルティックからのオファーが舞い込んできたのは26歳の夏だ。
「オファーをいただたときは、その時がきたのかなと。岐阜と神戸という素晴らしいチームでやれたことで自信もついていましたし、小さな頃から海外でやりたかったので」
小学校のとき、クラブワールドカップで来日したロナウジーニョを目にし、人智を超えた技巧に感銘を受けた。高校の頃にはバルサ好きの監督の下、バルサの試合を見ながらミーティングを繰り返した。実際に現地にも行った。中学の時に1度。高校で2度。3年前にはプライベートでスペインを訪れた。
「現地のサッカーを肌で感じて、すごいなと。神戸にきてからは、アンドレス(イニエスタ)、ルーカス(ポドルスキ)、ダビ(ビジャ)ら素晴らしい選手に囲まれて、日々練習が楽しかった。彼らと出会えたことで、より海外でプレーしたいという気持ちになった」
「言い方は悪いけど、相手を殺すかのような」
彼らに欧州の話を聞く機会もあり、ある程度想像はしていた。しかし、実際にスコットランドのピッチに立ち体をぶつけた相手は、想像よりも大きく、激しかった。
「刈りとるような勢い。言い方は悪いけど、相手を殺すかのような。球際が激しくて、がっつりくる。単純に身体能力が高く、体つきも大きいからパワーもあるし、その割には俊敏に動ける。チームとして組織的ではあるんですが、最終的には個の力で奪い切る感じですね」
奪い切る守備がベースとなる英国と、抜かれない守備が前提の日本。目の前の敵の思考はまるで異なる。古橋は決して体は大きくはない。海外での初めてのシーズン、刈りとられないために彼は何を考えているのか。