2月のキャンプインで初めて顔を合わせて、ブルペンで何度か受けても、また1カ月かそこらだ。

　なのに、早くも160キロラインをクリアした速球を、捕球点でミットをねじ上げるようにしっかり止めて球筋を球審に見せ、140キロ台のフォークの空振りもミットの芯に納め、高速スライダーのショートバウンドは、体で止めにいくより、むしろミットで吸収するように「捕球」するほうが多かった。

　それより何より、この場面だ。

　佐々木投手の160キロが右打者の外角に外れて、左腕を伸ばした松川捕手のミットをかすめて、バックネット方向へ抜けた。

　さあ、どうするか……と見ていたら、松川捕手、ボールのゆくえにチラッと目をやると、まるで何事もなかったように新しいボールを球審に要求して、佐々木投手に返すと、そのままドッカリと腰を下ろしたから、驚いた。

　普通のルーキー捕手なら、投手に謝り、球審に頭を下げてボールをもらい、ベンチを気にしてキョロキョロするぐらいは、やるものだ。

　いい根性している……もう、立派なレギュラーマスクだな……。

　次のボールのサインを出して、ミットを構えた。

　私には、松川捕手がミットを構えているのではなくて、ミットを構えた松川捕手の姿が、まるで「ミットそのもの」に見えていた。

　佐々木投手がパーフェクトゲームを成し遂げた試合、6回にセンターオーバーのダメ押し3点タイムリー二塁打を放って、バットでも快挙達成のあと押しをしてみせた。

　スラッガーとしての素質もまた一級品なのは、間違いない。

　ここまで、まったく語られていない「松川虎生、ホームランキングへの資質」についても、いつの日か、書く機会を密かに楽しみにしている。

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