完璧なケアと準備ができれば、ポイント練習やトレーニングがさらに充実し、佐藤が考える過負荷でのトレーニングもできるようになる。歯車が合えばフィジカルや能力は劇的に変化していくのだ。実際、飯田は区間7位に沈んだ出雲駅伝から約3カ月で、箱根駅伝を快走する身体に仕上がった。そして、4区3位で往路優勝を決定づける走りを見せたのである。

青山学院大学を卒業した飯田。今春からは強豪・富士通で競技生活を続ける予定だ　©Yuki Suenaga

「箱根駅伝も選手を見ていると胃が痛くなる（笑）」

　佐藤のスタジオに訪れる選手は若く、優秀な選手が多い。将来はオリンピアンが出てきてもおかしくはないだろう。自分が育てた選手がオリンピアンになることを目標にするトレーナーも多いが、佐藤はそのあたりをどう考えているのだろうか。

「『オリンピアンを出したくないの？　担当したいと思わないの？』ってよく言われますけど、全然思わない。できればアスリートはやりたくない（笑）。フィジカルトレーナーをやるなら健康維持を目指す一般の人を時間区切りで見ていた方が色んなメニューができますし、正直金銭的にも条件は良いです。それに、オリンピアンって怖いですよ。何かあった時は僕の責任にもなりますし。だから、箱根駅伝も個人契約している選手が走っているのを見ていると胃が痛い。とにかく襷をつないでくれ、途中で止まらないでくれって思いながら見ているので（笑）。

　だから僕の仕事は選手が最後まで無事に襷を渡してくれたらお役御免ですが、それでも結果を出した選手から『良かったです』と言われるのはすごく嬉しいんですよね」

（撮影＝今井知佑） 

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