再び戻ったスノーボードでも挑戦する姿勢は変わらなかった。他の誰もできないことを、表現をしたい。そのひとつが、前人未到の技であるフロントサイドトリプルコーク1440の習得だった。

「正解がないトリックなので、最初は難しいと思っていました」

　先人がいないからこそ、道を切り拓きたかった。

「トリプルコークが生まれたことで、時代も変わったんじゃないかと思います」

日の丸を広げる平野歩夢　©Naoya Sanuki/JMPA

ショーン・ホワイト「歩夢を誇りに思います」

　この大会は、スノーボード界のスーパースター、ショーン・ホワイトの最後の試合でもあった。試合を終えて、抱き合って互いを称え合う中、平野はホワイトにこう言葉をかけられたという。

「マジですごい滑りだった、みたいなことを言われました」

　ホワイトは、テレビの取材でも平野を称賛した。

「すごく嬉しいです。彼を応援していました。歩夢は、すごかった。才能があって、挑戦し続けてきて、ついに金メダルを獲得しました。歩夢を誇りに思います」

　スノーボードの本場であるアメリカの3大ネットワークでの中継などでも「歴史的な滑り」「ハーフパイプ史上最高のラン」と称賛が相次いだ。ホワイトがそうであったように、競技を新たな次元へと引き上げた平野への手放しの敬意があった。

4年前の平昌五輪で歴史的な名勝負を繰り広げた平野歩夢とショーン・ホワイト　©JIJI PRESS

　試合のあと、ミックスゾーンでは国内のみならず海外のテレビ局からの取材も受け、最後に新聞や雑誌などの合同取材に応じた。テレビ各局の取材では、局が変わるごとにまったく同じ質問が出ても、何度でも丁寧に答えた。最後の取材まで言葉がおろそかになることはなかった。おおよそ、1時間半ほどかかったろうか。そのあとにはメダリスト会見にも出席し、ひとつひとつの質問に実直な対応を続けた。

「これからも自分だけのチャレンジを追っていければ。それがどういう道のりになるのか、自分自身と向き合いながら考えていければ」

　誰も歩いたことのない、誰も見たことのない地平へ進んでいく。これからもその足取りは変わらない。

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