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【イベントレポート】Numberビジネスカンファレンス《最強の「チーム」を創る、最高の「パフォーマンス」を引き出す 勝利の方程式》 

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photograph byJBA / Takuya NAGAMINE

posted2022/02/14 11:00

【イベントレポート】Numberビジネスカンファレンス《最強の「チーム」を創る、最高の「パフォーマンス」を引き出す 勝利の方程式》<Number Web> photograph by JBA / Takuya NAGAMINE

岡田武史氏の転機は「情報公開」

アジェンダII (エンゲージメント・タレントマネジメント)
「チームマネジメント、コーチング、育成、戦術、エンゲージメント」~岡田メソッド-自立した選手の育成法~

 サッカー日本代表やJリーグの監督を歴任、現在は愛媛のFC今治の運営会社「今治.夢スポーツ」を経営する岡田武史氏が、サッカーチームや会社の強い組織作り、メンバーのエンゲージメントを高める工夫について語った。

 プロのチームは「優勝という短期的成果」が求められる。監督は、試合中の様々な状況を想定して、機能を中心にして必要な選手をそろえ、自己主張が強い選手に、チームのために望まないことをしてもらう必要もある。「だから指示に納得できないなら、どんなに優秀な選手でも外れてもらうという“覚悟”が大事だった」と監督時代を振り返った。一方で、選手のモチベーションのために、良いプレーを褒めるなど「存在を認めている、ちゃんと見ている、と伝えることも大事にした」という。

 会社は「次世代のため物の豊かさより、心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」という同社の理念に共感した人が集まって、長期的目標を追う。「だから、チームづくりと会社経営は別だと思っていたが、目的に向かって力を合わせ、個人の成長が組織の成長になるところは同じだった」と話す。

 社員の成長のためには権限委譲を意識する。当初は、すべてトップダウンで決めていたが、「それでは、優秀な人材でも自ら動かなくなってしまう」と気付いてからは、フラットな組織づくりを進めた。転機となったのは「情報公開」だった。シーズン中にチームから中国にコーチを派遣しなけれはならなくなった時のこと。コーチ派遣事業は収益の柱だが、優秀なコーチを手放したくないチーム事情もある。そこで岡田氏はコーチ陣に、会社の財務状況を含めてコーチ派遣事業の重要性を説明した。「コーチ陣が話し合って適任者を選び、『彼を送り出した後の穴は、我々全員で埋めます』と言ってくれた。涙が出そうになったのと同時に、経営者と同じ情報がなければ、スタッフが当事者意識を持てるはずがないということも痛感した」と語った。

 対談には、社員に知人を紹介してもらうリファラル採用を支援するMyReferの鈴木貴史氏も参加。会社の情報を個人のSNSで発信し、自ら仲間集めをすることで、社員の当事者意識が強まり、組織市民行動(役割外行動)を促進して、組織パフォーマンス向上につながると説明した。岡田氏も「当社は理念重視なのでエンゲージメントは高い。だが、それを採用に利用するという発想はなかった」と関心を寄せた。

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