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《箱根駅伝・往路優勝》レース前の憶測「青学大の3区は交代するのでは…」なぜ原晋監督は“2人の1年生”をサプライズ起用できたのか? 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byNanae Suzuki

posted2022/01/02 19:45

《箱根駅伝・往路優勝》レース前の憶測「青学大の3区は交代するのでは…」なぜ原晋監督は“2人の1年生”をサプライズ起用できたのか?<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

青学大は2年ぶりの往路優勝。レース後にインタビューを受け、5区若林宏樹(1年)をねぎらう原晋監督

 柔和な印象は消え、殺気をはらんでいる感じで、集中力が増しているようだった。

 駅伝で2本外してしまっては、青学大ではレギュラーを獲得するのは難しいが、原監督は若林については自信を持っていた。

「結果的に、出雲、全日本ともに接戦でタスキが回ってきたね。プレッシャーの中で走れた経験は大きいんじゃないですか。若林は上りの適性があるので、5区、8区には向いてます」

 11月、12月の練習の消化率も申し分なく、5区を希望していた主将の飯田貴之を抑えて山上りを担当した。若林はレギュラー争いを勝ち抜いたのだ。

 そして飯田から先頭でタスキを受けると、平地の函嶺洞門ではその時点で区間13位と不安を抱かせたが、上りに入ってからが“淡々と”強かった。

 大平台で区間5位、小涌園前で3位、芦之湯では区間最高タイムに。終盤に入って区間3位となったが、駒大に3分28秒の大差をつけたとなれば、「上々吉」の走りだ。

 ゴール後の若林には、安堵の表情が浮かんでいた。

「上りきったところの頂上地点では、風がきつくて本当に前に進まず、きつかったです。心を折られかけました。やっとゴールテープを切れて、うれしいし、達成感もあります。ただ、区間賞を取れなかったので、悔しい思いもあるんですが、出せる力は出せたかなと思います」

「僕たちの学年で、箱根駅伝4連覇を狙いたい」

 青学大の1年生は強い。

 彼らが高校3年生の時には、全国高校駅伝の1区で鶴川正也(熊本・九州学院)が区間賞、若林が3位、喜多村慧(兵庫・須磨学園)が8位で、太田が10位という結果だった。つまり、エース区間のトップ10のうち4人が入学し、成長を見せている。

 夏、太田は話していた。

「在学中は、駅伝三冠を狙っていきたいです」

 若林は話していた。

「僕たちの学年で、箱根駅伝4連覇を狙いたいです」

 早くも、彼らは箱根駅伝の大舞台で実力を証明したのである。

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