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カズが生き抜いたブラジル、メッシを生んだアルゼンチンの育成より… 日本サッカーの参考になるのは《実はウルグアイ》なワケ 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byJMPA(2)/Getty Images

posted2021/11/14 17:02

カズが生き抜いたブラジル、メッシを生んだアルゼンチンの育成より… 日本サッカーの参考になるのは《実はウルグアイ》なワケ<Number Web> photograph by JMPA(2)/Getty Images

ネイマール、メッシ、スアレス。南米各国が誇るストライカーはそれぞれの育成環境の上で育まれている

 これに対してブラジルの指導者は、「バビーフットボールは、かなりの危険を伴う。我々は、小学生年代では楽しみながらテクニックと状況判断を身に付けたら十分だと考えている」と語る。

 これは考え方や文化の違いでもあり、どちらが正しいとも言えないのではないか。しかし、この両国の選手育成が世界トップレベルにあるのは間違いない。

日本が参考にすべきはウルグアイ?

 ただしブラジル、アルゼンチンと日本とでは、フットボールの歴史、実績、文化、社会環境などがあまりにも異なる。南米で日本にとってより参考になるのは、ウルグアイかもしれない。

 ウルグアイもブラジル、アルゼンチンと同様、選手は主としてプロクラブのアカデミーで育つ。小学生年代にバビーフットボールを経験するのは、アルゼンチンと同じだ。

 人口は約350万人で、横浜市より少ない。1部リーグが16チーム、2部リーグが12チームあり、その下にアマチュアリーグがある。

 このわずか28のプロクラブとアマチュアクラブのアカデミーによる選手育成でありながら、かつてあのジダンが憧れたMFエンゾ・フランチェスコリ、FWディエゴ・フォルランらを輩出しており、現在もFWルイス・スアレスにCBホセ・ヒメネス(いずれもアトレティコ・マドリー)、MFフェデリコ・バルベルデ(レアル・マドリー)ら世界のトップ選手がいる。

「才能の無駄遣いは絶対に許されない」

 小国なのに、なぜこれほど優れた選手を大量に生み出すことができるのか。

 ウルグアイの名門ペニャロールのアカデミーを取材したことがある。

 首都モンテビデオの郊外に練習場があり、施設はブラジルのビッグクラブのアカデミーより質素だった。万事に開放的なブラジルとは違ってウォーミングアップと最後の紅白戦しか見せてもらえなかったが、指導者と選手が並々ならぬ真剣さと集中力で練習に取り組んでいるのを感じた。

 アカデミーの責任者がこのように教えてくれたのが印象に残っている。

「我が国の人口は、ブラジルの70分の1、アルゼンチンの13分の1でしかない。この両国に伍して戦うためには、才能の無駄遣いは絶対に許されない。選手一人ひとりを、継続してきめ細かく指導する。学業も重視しており、心理カウンセラーによる精神面のケアも行なって、色々な角度から選手をサポートしている」

 一方、日本の選手育成システムは、これら南米強豪国とは大きく異なっている。<続く>

#4に続く
部活的な「中学・高校3年ずつで育成」は世界的に見て非効率? ブラジル在住記者の《日本サッカー停滞打破》大胆提言

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