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〈最大7ゲーム差をつけるも…〉阪神はなぜ優勝を逃したのか? 藪恵壹が指摘する「ヤクルトにあって阪神になかったもの」 

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藪恵壹

藪恵壹Keiichi Yabu

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posted2021/10/28 17:03

〈最大7ゲーム差をつけるも…〉阪神はなぜ優勝を逃したのか? 藪恵壹が指摘する「ヤクルトにあって阪神になかったもの」<Number Web> photograph by KYODO

勝ち星ではリーグ1位ながら、無念のV逸に終わった阪神。藪恵壹に「ヤクルトにあって阪神になかったもの」を語ってもらった

その3)梅野の“スタメン落ち”は正しかったのか?

 そして3つめが、「チームが本当に一枚岩になれていたか」という点です。ヤクルトは高津臣吾監督の「絶対大丈夫」を合言葉に、チームがまとまっている印象がありました。もっと言えば、あの動画を球団がYouTubeで公開したことで、選手のみならず、ファンまで一体となって優勝に向かうことができたように感じます。あのようにわかりやすくて、不思議と力になるような言葉でチームをまとめるあたり、いかにも高津監督らしいマネジメントですね。そうした一体感があったからこそ、シーズン最終盤、1番塩見泰隆、2番青木の当たりが少し止まっても、優勝を前に足踏みしても、チームは崩れなかったのだと感じます。

 もちろん、阪神もチーム一丸となって戦っていたと思います。実際、10月も12勝5敗3分という成績を残して、最後の最後まで粘りました。しかし、一枚岩になりきれたかという点では、疑問を感じた采配もありました。

 それが捕手・梅野隆太郎のスタメン落ちです。今シーズン、阪神は最多勝争いトップの青柳晃洋、ともに10勝を挙げた秋山拓巳、伊藤と投手陣の奮闘が光りました。岩貞祐太や岩崎優、スアレスらリリーフ陣もしかりです。そして彼らをリードし、チーム防御率リーグ2位の3.30に導いたのは、100試合以上でリードした梅野の存在でした。にもかかわらず、10月8~10日の神宮3連戦で、梅野が先発マスクを被った2試合を落としたからといって、外す必要はなかったと見ています。

最終戦で感じた“ちぐはぐ感”

 キャッチャー出身の矢野燿大監督なので苦渋の判断だったとは思いますが、やはり扇の要ですから。せめて坂本誠志郎と併用するなり、うまい起用法があったのではないか、と。シーズン最終盤、ここから逆転優勝を狙うという重要な局面でレギュラーを外された梅野の気持ちを思うと……。「この大事な局面でこそチームに貢献する」という自負があったでしょうし、彼を信じて起用し続けることで、ナインに伝えられた“メッセージ”もあったのではないかと思います。

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