「“公表”っていうのは、抽選の確率が低くなるのを嫌い、1位のターゲットをほかの選手に代える球団が出てくることを期待して公表する場合がまず1つ。あとは、自分の球団が惚れ込んでるってことを明確なメッセージとして選手に伝えるため。でも最近は、球団によって入団を拒否する選手なんていなくなってきたから、この意味合いは小さくなってきましたけどね」

　今はほとんどが「前者」だという。

「西武の場合は、誰がどう見たって“左腕”に決まってましたからね。ならば公表して、競争相手を減らそうってことだったんじゃないですか。ソフトバンクの風間は、ちょっとわかりませんけど、誠意を見せて交渉をやりやすくする狙いがあったかもしれない」

「“混乱”の原因は山下ですよ」

　球団にとって初めてドラフト指名する学校や会社の場合、先方の事情がわかりにくいので、特に上位指名だと慎重になるという。

「もう1つ、今年はちょっと特別な事情がありましたからね」

　こんな話を教えてくれたスカウトもいた。

「高校野球はこの1年、なんとか大会も出来たけど、社会人と大学はコロナにだいぶ翻弄された。それでも、社会人は9月の都市対抗予選が出来て、決定権のある人に見てもらえましたけど、大学野球はこの秋のリーグ戦までてんやわんやだったでしょ。ウチなんか、公表どころか、1位候補を絞ることすら前日まで出来なかった。そういう球団がいくつもあったって、聞いてますよ」

　中日1位のブライト健太外野手（上武大）は、ドラフト前にわずか1試合のプレーしか見せられなかったし、広島1位の黒原拓未投手（関西学院大）も3イニングのみのピッチングを披露しただけで、ドラフトに臨まざるを得なかった。

「いやあ、今年のドラフトの“混乱”の原因は、山下ですよ、山下（輝投手、法政大・188cm100kg・左投左打・木更津総合高）！」

　声を大にするのは、パ・リーグのスカウトだ。

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