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「石川祐希、やっぱりすごいわ」満身創痍のアジア選手権で見せた圧倒的な存在感…でも「まだまだ実力不足」と自己評価が厳しい理由 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byTakahisa Hirano

posted2021/09/23 11:03

「石川祐希、やっぱりすごいわ」満身創痍のアジア選手権で見せた圧倒的な存在感…でも「まだまだ実力不足」と自己評価が厳しい理由<Number Web> photograph by Takahisa Hirano

東京五輪に続き、アジア選手権でもキャプテンとして存在感を発揮した石川祐希

 言葉の力、言葉の強さを感じさせられたのは選手だけではない。メディアも同じだ。

 アジア選手権では、出場したすべての試合後のオンライン会見に臨んだ。試合直後であるにもかかわらず、勝因や敗因と、発する1つ1つの言葉が明確で、石川のコメントを聞けばどこが試合のポイントだったかは手に取るように伝わってきた。

 たとえば中国に敗れた翌日、オーストラリア戦。勝たなければ準決勝進出がなくなる大事な一戦で、流れを大きく引き寄せたのは途中出場のセッター大宅真樹だ。オーストラリアのブロックにかかることが多かった攻撃を、交代直後の1セット目、15-18と日本が3点を追う場面で、大宅は石川に続けてトスを集めた。

 それまでやや詰まり気味だったレフトからの攻撃を活かすべく、トスを伸ばしてストレートに打たせ、続けてラリー中もランニングセットから石川に託すと、それを高い打点から豪快に打ち抜く。

「チームに火をつけたいという意図を持ってコートに入った。石川選手に託してリズムをつくっていこう、と頭の中で流れができていました」(大宅)

 石川と同じ歳の大宅は、もともとユース(U19)代表から共にプレーしてきた信頼関係があり、勝利を引き寄せる最も効果的な策だと知っている。だからこそ、あえて石川にトスを集めた。そして、その選択が一気に流れを引き寄せ、石川の連続スパイクを含む6得点で日本が逆転。そのまま波に乗りストレート勝ちで準決勝進出を決めた。その試合を石川はこう振り返る。

「(大宅は)託す時はしっかり託す選手なので球が来るだろう、集まるだろうと思っていました。点を取らないといけない場面だったのでそこで取るのが自分の責任。1セット目の序盤はなかなかリズムがつくれない状況があった中、託してくれたことによって流れがつかめたと思いますし、自分のスイッチも、チームとしてのスイッチも、うまくいい方向に持って行けたと思います」

 漠然とではなく、冷静かつ的確。勝つためには相手より多く点をとらなければならず、それが自分の果たすべき役割だ。頼れるリーダー、キャプテンとして申し分のない働きだった。

「アジアで一番にならないといけない」

 ただ一方で、その貢献度は誰しもが認めるのだが、イランに敗れ準優勝で終わった大会を総括する石川の自己評価は厳しい。
 
「キャプテンとして、非常に充実した、勉強になったシーズンで、成長できたと思っています。でもやっぱり、チームを勝たせることがキャプテンの役割だと思うので、アジア選手権でタイトルを獲ることができずに終わったのは悔しいし、この先世界で勝つチームになるためには、アジアで一番にならないといけない。その結果は出せなかったので、僕もまだまだ実力不足だと思います」

【次ページ】 今年のテーマは「勝つこと」

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