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ブティック店長候補から6年でチェルシーの正GKになった、エドゥアール・メンディの謙虚な自己分析「僕は控えGKで状況は明確だ」 

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posted2021/08/15 11:01

ブティック店長候補から6年でチェルシーの正GKになった、エドゥアール・メンディの謙虚な自己分析「僕は控えGKで状況は明確だ」<Number Web> photograph by L’Équipe

CLのグループステージではチェルシーの前に在籍したレンヌと対戦。2−1で勝利を収めた

――マルセイユに向かう列車のなかではどんな気持ちでしたか?

「着くまでずっとこんなに興奮していた(と両手で眼を大きく開く)。『落ち着け。僕は23歳で3週間後には父親になる。これが最後のチャンスだ。駄目ならサッカーを止めて、別の仕事を探すしかない』と自分に言い聞かせた。マルセイユ行きは家族以外誰も知らなかった。初日の試合ではいいプレーができて、ベルナトウィックが僕のことをトップチームのGKコーチのステファン・カサールに話した。翌日にはトップチームの練習に合流して、ロッカールームからピッチに向かうとそこにはラッサナ・ディアラやルーカス・オカンポス、ニコラ・ヌクル……。2週間前にユベントス戦を戦っているのをテレビで見た選手たちがいた。『なんてこった。こりゃやるしかない。すべてを出し尽くすんだ』と思った。実際にいい出来で、それまでで最高のパフォーマンスだった。突き抜けた感じだった」

運命を変えた1本の電話

――ディアラには何と言いましたか?

「彼は僕がル・アーブル出身であること知っていて共通の友人もいた。こんな感じだ。

 ディアラ:君はル・アーブルから移籍してきたのか?

 メンディ:いや、練習はしていたけどクラブには所属していなかった。

 ディアラ:じゃあどこでプレーしていたんだ?

 メンディ:クラブがなかったから去年はポール・アンプロワ(公共職業安定所)に行った。嘘じゃないよ。

 ディアラ:そりゃない。あり得ないだろう。

 僕の話を彼が信じるまでに4日かかった。彼は直ちに僕と契約すべきだとコーチたちを説得した。他のGKもテストすることをあらかじめわかっていたからだ。首脳陣の意向はもう決まっているから心配するなとカサールは言ったけど、僕は彼にこう答えた。『僕のなかではハッキリしてはいない』と。実際にサインするまで何が起こるかわならない。ル・アーブルに戻ってからの3日間は、人生で最も不安な日々だった。両親はひっきりなしに『電話はあったのか?』と聞いてくる。金曜にステファンから連絡があり、テストは合格で月曜に来るようにと指示があった。この瞬間に、1年間抱え込んでいた重荷がすべて吹き飛んだ。あの電話は一生忘れない。ずっと悲嘆に暮れていた母もようやく笑みを取り戻した」

【次ページ】 プロ入り後に訪れた進化の兆し

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