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崩壊寸前からの鮮烈な復活劇 スター不在で華麗さもなく、チャンスメイクも不得手なチェコはなぜEUROで躍進できたのか?

posted2021/07/07 11:04

 
崩壊寸前からの鮮烈な復活劇 スター不在で華麗さもなく、チャンスメイクも不得手なチェコはなぜEUROで躍進できたのか?<Number Web> photograph by Getty Images

オランダを撃破しベスト8進出を果たしたチェコ。ハードワークを基調とした組織的な戦いで、サッカーの本質を見せつけた

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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 サッカーのチェコ代表が欧州の頂点まであと一歩に迫ったときがあった。

 1996年にイングランドで開催されたEUROで、チェコは下馬評を覆す快進撃を続け、準優勝を成し遂げている。そう言えば有料放送『WOWOW』が初めて生中継したEUROでもあった。

 筆者はテレビにかじりついて観戦していて、決勝トーナメント初戦のポルトガル戦でカレル・ポボルスキーが高速ドリブルから決めたループシュートの美しさを思い出す。

 チェコからは、その他にもパベル・ネドベド、ヤン・コラー、マレク・ヤンクロフスキ、トマーシュ・ロシツキー、ミラン・バロシュ、ペトル・チェフなど、優秀な選手が次々と輩出されてきていた。

 ネドベドはユベントスで中軸を務め、ロシツキーとコラーはドルトムントでリーグ優勝、チェフはチェルシーやアーセナルで長年活躍した。2004年のEUROは結局ベスト4で敗退したものの、優勝候補の1つにあげられていたほどだ。

酔っぱらった状態で笛を吹き処分された審判も

 そんなチェコが、近年は表舞台から姿を消してしまっていた。現在ホッフェンハイムでプレーするパベル・カデラベクがこぼしていたことがある。

「チェコには、もうかつてのようなビッグネームがいない」

 30代半ばになったロシツキーやチェフに頼らざるを得ない時代があった。元代表監督のカレル・ヤロリムは「問題は、シンプルにトップリーグでプレーしている選手があまりに少ないというところにあると思う。そして、チェコリーグ自身はそこまで強くはない」と指摘していた。

 調子が良いときには問題点に目が届きにくい。それは、どの世界でも同じ。スラブ民族の誇りを胸に、好選手を数多く輩出してきた自負が前進を止めてしまったのだろうか。

 チェコサッカー界は、他の欧州リーグと対等に戦えるだけの地力があるわけではない。金銭面もインフラ面でも苦しい。観客数はさらに厳しい。だからといって何もしないまま、できないままでは、進歩がないどころか衰退してしまう。

【次ページ】 スラビア・プラハのスタイルが良い影響を及ぼす

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