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「松本さんは、バレーボールの化身ですね」40歳でもスタメン、進化を止めない松本慶彦の何がスゴい? 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph bySAKAI BLAZERS

posted2021/03/24 11:02

「松本さんは、バレーボールの化身ですね」40歳でもスタメン、進化を止めない松本慶彦の何がスゴい?<Number Web> photograph by SAKAI BLAZERS

今年2月にVリーグ400試合出場を達成。ゴーダン監督(右)からも「信じられない」と賞賛された

成績が上がった理由は?

 その要因は、昨年のトレーニングにあると松本は言う。昨年は新型コロナウイルスの影響で、体育館に集まってボール練習ができない期間が長かった分、じっくりと自分の体と向き合うことができた。チームから与えられたメニューに加え、阪本敏夫トレーナーと相談しながら体幹やインナーマッスルなどの強化に取り組んだおかげで、今リーグでは明らかな変化を感じている。

「クイックに入ってジャンプした時に、見え方が違います。ここ最近は滞空力がだいぶ落ちてきていて、ブロックが見えてなくて打ち分けられない時もあったんですけど、今季は、空中でちょっとした時間を使えるようになりました。ブロックも、横への移動や、空中バランスがここ数年あまりよくなかったんですけど、今はそこも改善されていると感じます」

 松本は身長193cmとミドルブロッカーとしては大型ではないが、かつて日本代表トップの最高到達点358cmを記録した。さすがにその数字を維持するのは難しいが、それでも今季は350cmをマーク。空中で静止しているかのように、相手ブロックを見てから巧みにクイックを打ち分けている。

「数字もここ3年ぐらいの中では一番いい。うまくやれば、年齢が少しいってもいい結果を残せると、40歳にして感じました」とまだまだ自分に伸びしろを感じている。

大学時代に味わった「初めての挫折」

 前人未到の域を歩み続ける松本にも、バレーを辞めようと考えたことがあった。

 中学からバレーボールを始め、岡谷工業高校ではエースとして、同校初の春高バレー優勝に貢献した。抜群の跳躍力でブロックの上から打つスパイクは面白いように決まった。

 しかし大学で壁にぶつかった。中央大進学後もアウトサイドヒッターとしてプレーしたが、ブロックの上から打てても、ディフェンスで拾われ、スパイクが決まらなくなった。ブロックを弾き飛ばそうとしてもうまくいかない。

「筋力の問題もあったと思います。もともと体格がいいほうじゃないので。トレーニングはすごくやったんですけど、これ以上の威力で打つのはたぶんもう無理だな、と感じました。パワーでは他のサイドの選手に追いつけないなと。初めての挫折でしたね。『もういいや』って、バレーを辞めようと思うところまでいきました」

 行き詰まっていたせいか、大学2年の頃の記憶がまったくないという。そんな松本に中央大の栗生澤淳一監督(当時)が、「一度ミドルブロッカーをやってみるか」と提案した。

【次ページ】 北京五輪に出場「もうバレーはいっか」

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