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ビエルサが語った「失点の7通りのパターン」とは? リーズの強烈な“ハイプレス”の仕組みも愛弟子が解説

posted2020/12/12 17:01

 
ビエルサが語った「失点の7通りのパターン」とは? リーズの強烈な“ハイプレス”の仕組みも愛弟子が解説<Number Web> photograph by Getty Images

アーセナル戦でピッチに向けて指示を出すビエルサ

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赤石晋一郎

赤石晋一郎Shinichiro Akaishi

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プレミアリーグ、リーズ監督マルセロ・ビエルサの人柄と戦術を日本人唯一の“門下生”である荒川友康氏(FCトレーロス所属)が語るこの連載。第4回の前編はアーセナル戦前の記者会見をもとに「失点の7通りのパターン」やその後の試合の戦術などについて解説します(後編はこちら。記事最終ページ下の「関連記事」からもご覧になれます)。

 11月22日のアーセナル戦前、ビエルサの評価は揺らいでいた。リーズは前節、前々節とボールを支配しながらも、レスターに1-4、クリスタルパレスに1-4と2試合連続の大敗が続いていたからである。

 ビエルサのチームは攻撃は良いが、守備が脆い──。そんな批評が再び噴出していたのだ。ビエルサという監督は戦術マニアと賞賛される一方で、ステレオタイプの批判を浴びやすい監督である。守備が脆い、ハードワークで選手が消耗する、チームが後半戦にスタミナ切れして失速する云々――。

 だが、こうした批判が起きるのはメディアが未だ古い視点でしかフットボールを見ていないからである。それを実感させたのが21日、試合前会見のビエルサの言葉だった。

 同会見でビエルサは記者からお決まりの次のような質問を受けた。

――前節までの失点の多さについて、どのような改善をしないといけないと考えますか?

 記者の質問は、ありきたりといえばありきたりの質問であった。ビエルサはこの質問に対して論理的かつ批判的にこう解説したのだ。

数字だけでサッカーを評価することへの苦言

「私は質問に対して中身のあることを話そうと思いますが、よろしいでしょうか?

 リーズの第8節までの失点は17でした。これはプレミアリーグでの最多失点でした。一方で、プレミアリーグで最も少ないチームは失点9でした。私は試合分析においては、“数字”ではなく、その失点の状況が『回避できる失点だったのかどうか』について検証されるべきだと考えています。

 守備とは少しでも不利な状況を避けようとするものです。指導者が守備を改善したいと考えるならば、不利な状況下でのディフェンスを避けなければいけない。

 まず17失点のうち4失点はPKです。そのPKには避けられたもの、判定の疑わしいもの、不必要なものもありました。更に3つのオウンゴールに、1つの避けられたミスからの失点がありました。この8失点は、ディフェンスのソリッドさとは関係のない、直接的な解決策が見いだせない失点だと思っています。仮にこの8失点を除いてしまえば、リーズの失点(17-8=9失点)は最少失点のチームと同じだといえます」

 やや難解な言い回しだが、ビエルサはリーズのPK等の8失点はディフェンス組織が崩されたものではないので、8失点に関してはディフェンス組織の問題だとはいえないと言いたいのだと思われる。つまり数字だけでサッカーを評価しようとするメディアに苦言を呈しているとも言える。そしてビエルサはこう続けた。

【次ページ】 「失点には7通りのパターンがあると考えています」

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マルセロ・ビエルサ
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荒川友康

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