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『鬼滅の刃』をスポーツ科学的に読む! “全集中の呼吸”の効能、イチロー&五郎丸歩の“アレ”と同じ場面は… 

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青木美帆

青木美帆Miho Awokie

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photograph byKyodo News

posted2020/12/08 17:02

『鬼滅の刃』をスポーツ科学的に読む! “全集中の呼吸”の効能、イチロー&五郎丸歩の“アレ”と同じ場面は…<Number Web> photograph by Kyodo News

話題沸騰の『鬼滅の刃』最終巻。スポーツ科学視点で見ても、メチャクチャ面白いのだ!

3.反復動作≒ルーティーン

 柱稽古の最中、炭治郎は不死川玄弥(しなずがわ・げんや)に『反復動作』という概念を教わる。

<集中を極限まで高めるために 予め決めておいた動作をするんだ 俺の場合は念仏唱える(コミックス16巻より引用)>

 飯田先生によると、これもスポーツ心理学でいう「ルーティン」に近い描写だそうだ。

「ルーティンというのは『一定のことを繰り返す』という意味で、同じ動作を日常的に繰り返すことで、気持ちを整え、パフォーマンスを向上させるという考え方です。イチロー選手のバット立てや五郎丸歩選手の指組みはこれに該当します。さらに、『靴下を必ず右足から履く』『試合前にはバナナを食べる』といった小さな行動もルーティンの一種と言えるでしょう」

 炭治郎は不死川の教えを受け、「大切な人の顔を思い浮かべる」→「煉獄杏寿郎の『心を燃やせ』という言葉を思い出す」というルーティンを開発。嘴平伊之助(はしびら・いのすけ)は「『天ぷら!』と二度連呼する」→「両胸を強く叩く」→「『猪突猛進!』と叫ぶ」というルーティンを完成させたことで、巨岩を押すことに成功している。

<まとめ>

 飯田先生は大学生向けの講義で、『鬼滅の刃』だけでなく『ドラゴンボール』や『SLAM DUNK』など、漫画を題材にスポーツ科学を取り上げることがよくあるという。

「当然フィクションなので、『これは実際にできない』という動きはたくさんあります。ただ、スポーツ科学の知識を持ってこれらを読んでみると『この技はあの現象を元にしているのかな』とか『これは一見もっともらしいことを言ってるけれど現実とは異なるな』っていうことがあるんですね。こういったきっかけから、スポーツ科学への興味を持ってもらえたらなと思っています」

 今回は3つのトピックに絞って構成した本稿だが、飯田先生によると『鬼滅の刃』におけるスポーツ科学的表現は、まだまだたくさんあるそう。執筆中に気づくと息が止まっている筆者も、呼吸と身体パフォーマンスの関連性をよりいっそう知りたくなった。

 再び「おうち時間」が増えそうな初冬の夜長。今こそコミックス全巻を引っ張り出してきて、スポーツファン視点で「鬼滅考察」をしてみてはいかがだろうか。

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