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巨人、2連覇「3つの核心」 原采配の妙、澤村トレードの真相、馬車馬のように働いた“あの投手” 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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posted2020/10/31 11:03

巨人、2連覇「3つの核心」 原采配の妙、澤村トレードの真相、馬車馬のように働いた“あの投手”<Number Web> photograph by KYODO

セ・リーグ連覇を達成し、エース・菅野を中心に写真に収まる巨人投手陣

回またぎのマウンドでも、3者凡退でピシャリ

 今季はチーム最多の44試合に登板。勝ち試合でも負け試合でも、どんな場面でもマウンドに上がってきたこの右腕は、優勝の陰の立役者と呼んでも良いだろう。

 鍵谷の存在を象徴するような試合が9月12日に東京ドームで行われたヤクルト戦だった。4対4の同点で迎えた7回。3番手の大江竜聖投手が招いた1死一、二塁のピンチで、打席に塩見泰隆外野手が入ったところでマウンドに上がったのが鍵谷だった。

 ここを切り抜ければ試合の流れは、巨人へと大きく傾いていく。そんなポイントとなる場面で指名され、しっかりと期待通りの仕事を見せた。

 塩見を外角低めに逃げていく131kmのスライダーで空振り三振に抑えると、さらに次打者の西浦直享内野手もやはり外角低めに逃げていくスライダーで2者連続三振に仕留めて流れを絶った。

 そして価値を見せつけたのが続く8回だった。

「どんな状況になっても対応できるように準備はしていた」

 その言葉通りに回またぎのマウンドに上がると、この回も三者凡退でピシャリと締めて、勝利への道筋を作った。

「行ってくれ!」と言ったら「わかりました!」

 実はこの試合は9月1日から始まった13連戦の12試合目(雨天中止の6日の阪神戦を含む)という胸つき八丁の試合だった。

 通常は8、9回を任せるセットアッパーの中川皓太投手とクローザーのルビー・デラロサは直近の5日間で4試合に登板。この日は練習も免除されて完全休養日を与えられていたのである。

 同じく連戦中に2人を温存した9日の中日戦でも、同点に追いつかれた6回2死一塁で田口麗斗投手をリリーフ。ここでも回またぎで投げて、日本ハム時代以来、1187日ぶりの白星も挙げている。

「優勝するためにはどんな場面でも『行ってくれ!』と言ったら『わかりました!』とマウンドに上がって、涼しい顔をして抑えてくる中継ぎ投手が絶対に必要だ」

 こう言っていたのは中日、阪神、楽天で優勝監督になった故星野仙一さんだった。

 まさに今年の巨人でその涼しい顔をして抑えてくる中継ぎ投手が鍵谷だったのである。

「今年はある意味、消耗戦を覚悟していた。特に投手陣はリリーフをどう使って勝てる試合を確実に勝ち切るか。結果的にはその部分で計算通りの戦いができたことが勝因の1つだった」(原監督)

 そう考えると高梨の加入も大きかったが、同時に鍵谷の存在も見逃せないということである。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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