「相手も手応えがよく、マズいなと思いました」

　父のディープインパクトも、菊花賞の1周目では折り合いを欠いてしまった。掛かり方はコントレイルよりずっと激しかったが、向正面に入ると折り合い、最後は2着を2馬身突き放した。しかし、コントレイルは最初から最後まで折り合うところがなかった。

　3、4コーナーでポジションを上げ、直線に向いてもすぐ外にアリストテレスがいた。福永は言う。

「相手も手応えがよく、ずっと並走する形になっていたのでマズいなと思いましたが、馬を信じて自分の気持ちだけはブレないように、強い気持ちを持って乗っていました」

　マークされる側は圧倒的に不利なのだが、コントレイルは最後まで抜かせず史上初の父仔無敗三冠制覇をなし遂げた。

やはり並ではない「勝ち切る強さ」

「やはり3000mは彼にとっては長い距離でしたし、今日もベストパフォーマンスを発揮できたわけではないのですが、それでも勝ち切ってくれたことが本当に素晴らしいと思います。無敗の三冠馬の息子が無敗で三冠を制覇したのは世界でも類を見ないことだと思いますし、大変な偉業だと思います。その鞍上に自分がいられたことを誇りに思います。牝馬のデアリングタクトもいますし、これからは古馬相手の戦いとなっていきます。日本で一番強い馬という称号を勝ち得るために、一緒に頑張っていきたいと思います」

　83年にミスターシービーで三冠を制した吉永正人の記録を更新する43歳10カ月17日の最年長記録で三冠制覇を達成した福永はそう話した。

　競馬というのは、強い馬が勝つのではなく、勝った馬が強いのだとよく言われる。最後までハラハラさせられたが、コントレイルが見せた「勝ち切る強さ」はやはり並の馬のものではない。

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