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沢木敬介、ラグビーは愛こそすべて。
新監督が語るキヤノンに足りないもの。 

text by

谷川良介

谷川良介Ryosuke Tanikawa

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photograph byWataru Sato

posted2020/07/14 11:40

沢木敬介、ラグビーは愛こそすべて。新監督が語るキヤノンに足りないもの。<Number Web> photograph by Wataru Sato

キヤノンイーグルスの監督に就任した沢木敬介氏。サントリーでも発揮した辣腕ぶりを、再び見たい。(2019年撮影)

田中史朗と田村優の印象は?

 何より、日本代表の躍進を「9番と10番が同じピクチャーを描けている」と語っていた沢木にとって、どのスペースにボールを運ぶのかを共有できる2人が揃うことはキヤノン監督就任の契機にもなった。経験が豊富な9番・田中史朗と新キャプテンに任命した10番・田村優の存在はそれだけ大きい。

「優は視野が広いですよね。司令塔としての視野。スキルも高くて、ちゃんとラグビーを考えてプレーしている。ズバズバ物を言うフミはもっとうまい伝え方を勉強したほうがいいけど(笑)、思っていることを主張できることはチームにとってプラス。個を優先した主張ではなく、チームを優先した主張が大事なのはわかっていると思うので」

 だからこそ、まずはチームの文化を作る。

「キヤノンだけではないですが、全員がどれだけ危機感を持ってやれるか。プロの世界なんて代わりがいくらでもいるよというスタンスなので、結果を出すために、信頼を得るために、自分も含めてハングリーになっていかないといけない。そういうコンペティティブなチームの中で、チーム力やチームに対する思いは深まっていくと思っている。仲が良いだけのチームじゃなくて、ちゃんと競い合えるチームにならないといけません。

 僕から言わせるとプロフェッショナルの一番大事なところは結局そこなんですよ。そういうチームづくりってあまりフォーカスされないから世に出てこないだけ。伝統あるクラブを見ても、人としてどうあるべきか、この組織の人間としてどうあるべきか、そういうことを大事にしている。今の神戸(製鋼)のラグビーが面白いのはそれがある。ほとんどがプロ選手でしょう? ウェイン(・スミスHC)が来てからいい競争意識が芽生えているのではと思います。もちろん危機感っていう意味でも」

チームや運営もプロにならないと。

 沢木は取材の中で「プロ」の理念を度々口にした。そこにはプロフェッショナルコーチとして積みあげてきた自負がにじみ出る。

「サンウルブズの仕事に集中していたのでエージェントに任せていましたが、その後のビジョンは頭の中で考えていました。プロなんで」
「リーグがプロ化するなら、チームや運営もプロにならないといけない」
「お金や人の話はGMの仕事でしょう。そういう部分もプロにならないと」

 ラグビー界が大きく変わろうとするこのタイミングで、沢木がTLに復帰する意義は大きいだろう。沢木が大事にするチームへの愛情の横には強烈なハングリー精神があるのだ。

 そんな沢木は、キヤノンでどんなラグビーを思い描いているのだろうか。

「まずはマインドセット。ラグビーのスタイルも大事ですが、組織としてどういうチームになるか。そのプロセスが大事なので。まぁ、正直どういうラグビーをやるかというアイディアはもうあるんですけどね」

 そして、最後はニヤッと笑みを浮かべてこう締めくくった。

「うーん、まぁ楽しみにしておいてください」

 新たなスタートを切ったキヤノンのラグビーを早く味わいたい。

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