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湯浅大は健大高崎時代から守備名人。
坂本勇人と競うよりはいっそ……。
 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byKyodo News

posted2020/06/26 07:00

湯浅大は健大高崎時代から守備名人。坂本勇人と競うよりはいっそ……。<Number Web> photograph by Kyodo News

3年目の20歳で開幕一軍はもちろん順調。しかし湯浅大のポテンシャルはそんなものではないはずだ。

出場機会さえあれば、絶対に伸びる。

 高校3年春のセンバツ前に右手首骨折。このケガは湯浅にとって痛かった。

 何事もなく、3年の春から夏にかけて飛び抜けた野球センスを実戦の舞台で披露し続けていれば、「ドラフト8位」なんてことはなかった選手だ。 夏の予選にはなんとか間に合わせたが、追いかけている球団は巨人のほか、あと1つ2つだった。

 突き抜けたセンスを持った人間は、高いレベルに置くほど、さらに輝きを増す。野球の世界に限らず、世の中一般に通ずる絶対共通項と考えている。

 西武・源田壮亮内野手がプロ入りした頃、彼をこれぐらい褒めちぎった時に、みんなからキョトンとされてしまったのだが、この湯浅大だってレギュラーで使われれば、そう時間をかけずに名手・源田壮亮と肩を並べるほどの「守備名人」になれる。私は、勝手にそう踏んでいるのだが、さてどういうことになるか。

才能の重複が……いかにも惜しい。

 そのために、巨人にいるのがベストかどうかは難しいところだ。

 なんてったって、レギュラーショート・坂本勇人は押しも押されもせぬ「ナショナルフラッグ」である。脂の乗りきった今年31歳、まだ3年や4年は元気なはずだ。抜くとか、追いつくとかいう言い方は、あまりに失礼であろう。

 二塁手には、「リードオフマン」を期待されている吉川尚輝が頭角を現わしつつある。

 となれば湯浅大ファンとして期待するのは、こんなことを言うとまた怒られそうだが、早めの「トレード」。これに尽きる。

 ショートのレギュラーがはっきりしない楽天なのか、日本ハムなのか……。

 先方にも、オコエ瑠偉や清宮幸太郎と、環境の変化で劇的な“化学変化”を起こしそうな新鋭がいる。

「暴言」と笑われるのを承知でこうまで言いきるのは、才能の重複がいかにも勿体ないからだ。

 才能の重複……確かに、それがプロの世界で他チームに差をつける重要な手段の1つなのはわかるが、湯浅大ほどの“才”を持てる力量の半分ほどしか見られないのは、あまりにも惜しい。

 西武・奈良原浩、ロッテ・小坂誠、阪神・久慈照嘉に広島・梵英心。重なる「守備名人」は何人も浮かぶ。高いレベルの実戦でセンスと技を磨いていけば、偉大な先輩たちと肩を並べられるほどの素質は保証しよう。

 もちろん、湯浅が巨人で活躍してくれるならそれだって大歓迎だ。

 5年後の「レギュラー・湯浅大」を見てみたい。

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