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メッシvs.久保建英で見えた共通点。
「ボールを蹴る喜び」は普遍の才能。 

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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photograph byGetty Images

posted2020/06/17 11:50

メッシvs.久保建英で見えた共通点。「ボールを蹴る喜び」は普遍の才能。<Number Web> photograph by Getty Images

リーガ再開初戦、メッシ相手に臆さずボールを奪いに行く久保建英。そんなハートの強さを見せられると、期待値は否が応でも高まる。

髭を剃り落とし、湧き出る若々しさ。

 キックオフの笛が鳴った瞬間からいつも以上に飛ばし、積極的にボールに絡もうとしたのは、長くサッカーから遠ざかっていた飢餓感を埋めるためだったのだろう。ボールと戯れる純粋な喜びがプレーの端々から香り立ち、髭を剃り落とし、つるりとした若々しい表情もあいまって全身から躍動感が滲み出す。

 泉のように湧き出るモチベーションの源は、きっと「ボールを蹴る喜び」に他ならないのだろうと想像する。その喜びを得るためなら、自らを厳しく律することも厭わないし、常に今以上の大きな喜びを得ることを目指しているからこそ、どれだけゴールを重ねても、どれだけタイトルを手に入れても満足はしないのだ。

 それは、危険を顧みず、何度も何度も険峻に挑む登山家の感覚に近いのかもしれない。

マジョルカ唯一の武器は久保だった。

 ただし、6月13日のソン・モイスには、メッシ以外にもう1人、全身から「ボールを蹴る喜び」を発散させている選手がいた。0-4と完敗を喫したマジョルカで、ただ1人抵抗を示していた久保建英だ。

 古巣相手に気持ちが昂っていたのは確かだろうが、しかしそれ以上に伝わってきたのが、「ようやくサッカーができる」という解き放たれたような感情。その柔らかなボールタッチと右サイドから弾むように仕掛けるドリブルは喜びに満ち溢れ、同時にそれは、マジョルカの唯一にして最大の武器となっていた。

 いずれも名手マルク・アンドレ・テア・シュテゲンに阻まれたとはいえ、22分にはカットインからの左足で、32分には低弾道のFKであわやというシーンも作っている。なにより、重鎮サルバ・セビージャを制して蹴ったFKが、加入当初からのチーム内における久保の立ち位置の劇的な変化を物語っていた。

 中断期間中も規律正しい生活を送り、フィジカルトレーニングも怠らなかったのだろう。この3カ月の間で、またひと回り身体が大きくなった印象だ。久保のサッカーと向き合う姿勢に、メッシとの共通点は少なくない。

 あとは、今以上のステータスと大きな喜び(=成功)を掴むために、どれだけ苦手分野を克服できるかだろう。

 メッシが右足とヘディングをレパートリーに組み込み、決して得意ではなかったFKの極意を、とにかく練習で何本も蹴り続けることで習得したように、だ。

【次ページ】 メッシが味わっていない苦労を糧に。

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