バレーボールPRESSBACK NUMBER

Vリーグ界きってのスーパーサブ。
遅咲き鈴木悠二の武器と新たな挑戦。 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

PROFILE

photograph byTORAY ARROWS

posted2020/04/24 11:00

Vリーグ界きってのスーパーサブ。遅咲き鈴木悠二の武器と新たな挑戦。<Number Web> photograph by TORAY ARROWS

Vリーグ「スーパーサブ部門」の1位に選出された鈴木悠二(18番)。最大の武器は磨き続けたジャンプサーブだ。

オフの日も繰り返したトス練。

 サーブを安定させるためには、まずトスを一定にすることが重要。チームの全体練習が終わると、鈴木は助走に入る位置や、トスが落ちる位置を自分の歩幅で計り、ひたすらトスを上げ続けた。

 当時、現役選手だった篠田監督も、「全体練習のあと、壁に向かってずーっと1人でトスを上げていた」鈴木の姿を鮮明に記憶にとどめている。

 鈴木は、打たずにトスだけを上げて、壁に当たって戻ってきたボールを拾い、またトスを上げるという単調な繰り返しを1時間、毎日続けた。リーグ中は月曜日が唯一のオフだが、鈴木は月曜日にも必ず体育館に来てトス練習をした。

「意外と苦痛ではなかったです。たぶん、僕は変なんだと思いますけど」と笑う。

 地道な練習を、苦だと思わずに続けられることは1つの才能だ。

 そのトス練習を始めて2週間ほど経った頃から、試合で起用されるようになり、結果が出るにつれ、サーブに自信を持てるようになっていった。

29歳でレギュラー「普通だったら腐る」

 3年目以降は30分程になったが、毎日のトス練習は続いた。

 最初はリリーフサーバーとしての出場が主だったが、徐々にアウトサイドでの出番も増えていき、7年目の'15/16シーズンに初めてレギュラーとして起用された。

 それまで東レはサーブが課題だったが、鈴木が先発出場してサーブを打つ機会が増えたことが、チームのサーブ力アップにつながった。

 その頃、指揮をとっていた小林敦前監督は、「ジャンプサーブはミス率が20%、フローターサーブは10%を超えると多い、というのが目安」と語っていたが、'15/16シーズンの鈴木はミス率が10.91%と、ジャンプサーブとしては驚異的に少なく、効果率もリーグ6位の19.3%と高かった。

 レギュラーに定着した翌'16/17シーズンも、リーグ4位のサーブ効果率(19.0%)を挙げ、チームの8季ぶりのリーグ優勝に貢献した。

 篠田監督はこう語る。

「入団して7年目、29歳でレギュラーとった選手なんて他にいるんですかね。サーブがなかったら終わっていたかもしれない。サーブが首をつないでつないで……。それにあいつは腐らないから。普通だったら腐っちゃいますよ」

【次ページ】 ダメな自分を、自分でわかっている。

BACK 1 2 3 4 NEXT
鈴木悠二
東レアローズ
篠田歩
秋山央
ジルソン・ベルナルド

バレーボールの前後の記事

ページトップ