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原口元気が万能型の兄貴分に変貌。
愚痴をこぼさず、泥にまみれて。 

text by

中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2020/03/14 11:30

原口元気が万能型の兄貴分に変貌。愚痴をこぼさず、泥にまみれて。<Number Web> photograph by Getty Images

泥にまみれながら戦う。かつては奔放なドリブラーだった原口元気は、チームプレーヤーへと変貌した。

「自分が出たときに取らないと」

 結果は大事だ。それで選手としての価値を測られるところもある。しかし、それよりもチームのためにやるべきことを重視している。

 例えば、カウンターで攻めあがるときには気持ちは前にばかり行きがちだ。でも、原口は味方がボールロストしたその瞬間に、すぐ守備へ切り替えることができていた。タイムロスせず、次のプレーに移っていた。

「前の3人が戻れないというか、ガーッといってバランス悪いところはよくあったんで。もちろん、自分の数字とかにこだわりたいんだけど、これだけ監督に信頼してもらって、使ってもらってるなかで、やっぱりポイント3っていうのは(大事)。前回(出場停止で)出てないなかでチームがポイント3を取った。今回、自分が出たときにちゃんと取らないと、というのは感じてたので、よりそっちにフォーカスしたというか」

 ニュルンベルク戦の終盤、ハノーファーは3点目をあげて試合を決めたのだが、原口もペナルティエリア内まで走り込んでいた。フリーだっただけに「パスが欲しかった?」と振ってみたら、「まあね」と笑いながらも、すぐに分析を付け加えた。

「カウンターに絡みたいけど、みんながいってガチャガチャになることが多すぎて。そのあたりも、もうちょいコントロールしたい。貪欲なヤツが多いので、そうなっちゃうのはしょうがないけど。まあ、いい迫力を持って攻撃できてるっていうのはあるので」

若い選手を笑顔でいじる兄貴分。

 主軸としての自覚は、若手選手への対応にも表われてきている。

 ニュルンベルク戦後、この日1得点をあげたリントン・マイナに近づくと、笑顔で頭をワシャワシャといじり、一緒に笑い合った。チーム内では国際経験豊富な兄貴分としての立場にあり、そんな役割も大事にしたいと思っている。

「あいつとか本当に才能あるから、ちゃんとすれば、すごく大きな選手になれると思う。いろいろ話すけど、まだまだ意識的に足りない部分があるし、彼が本当にプロサッカー選手として成長できるように、ちょっとでもアドバイスしていきたいなと思います」

 簡単なシーズンではない。苦労話を語ろうとしたらいくらでも語ることができるだろう。しかし、原口はそのなかでも前を向き、どの練習でもどの試合でも全力で戦ってきている。いつも泥で汚れているユニホームは、その証。その背中を若手はしっかりと見ている。

【次ページ】 「もしかしたら」の思いを消さず。

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原口元気
ハノーファー

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