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男子初スーパースラムのその先へ。
羽生結弦「バラ1みたいなフリーを」 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto

posted2020/02/10 20:00

男子初スーパースラムのその先へ。羽生結弦「バラ1みたいなフリーを」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

SPでは自身の世界最高得点を塗り替え、フリーもルール改正で4分半から4分へと変更した『SEIMEI』を見事に演じ切った。

「自分の呼吸じゃないな、と」 

「総合的によかったな。ほっとしました」

 試合を終えて、羽生は言う。

 そこには、優勝したことへの反応以上の、深い思いが込められていた。

 試合直前、プロフラムを変更した理由を、羽生はこう語っていた。

「(ショートの)オトナル(『秋によせて』)も『Origin』も自分の呼吸じゃないな、と」

 ジャンプを筆頭に高難度の構成を追求する中で、「スケートの部分がおろそかになってしまっている」という感覚が芽生えていた。

「ジャンプも表現として跳びたい」

 そんな思いに演技が届いていないと感じていた。そして、音楽と滑りが融合する演技ができる曲、という観点から、プログラム変更を決断した。

「限界の5歩先へ!」

 おそらくは、葛藤もあった。試合を終えてからの、次の言葉は示唆的だ。

「(世界選手権へ向けて)今やっていることをつきつめる感じが強いですね。方向性は間違っていない。これがいいなと。

 それが評価されるのであればいいし、評価されないのであればしようがないと割り切るしかない。ルールは自分で変えるものではないので。ジャッジの方々が見たときに、劣っていると思われてしまえば自分の実力」

 自ら限界点を、高みを引き上げ、理想を追い求めてきた。1月、ビデオメッセージで今年の目標を「限界の5歩先へ!」としたのも象徴的だ。

 理想を求める作業は、競技である以上、勝負という要素が加わる。ただし、採点という部分は自身でどうにもできないものだ。

【次ページ】 「この方向でスケートがしたい」という確信。 

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