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鹿島が元日の天皇杯決勝に託すもの。
大岩監督の最終戦、3年間の総決算。 

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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posted2019/12/30 11:50

鹿島が元日の天皇杯決勝に託すもの。大岩監督の最終戦、3年間の総決算。<Number Web> photograph by Getty Images

大岩体制で臨む最後の試合が元日の天皇杯決勝。アントラーズの歴史に残る1日になる。

小笠原が手本にした大岩の存在。

 そして2018年シーズンは、リーグ戦で開幕から苦戦が続き、一時は15位と低迷する。しかし8月中旬から順位を上げ、3位で終了。ルヴァンカップ、天皇杯は準決勝で敗退したが、ACLでは過密日程を消化して優勝を手にした。

 レアル・マドリー、リーベルプレートに敗れたCWCののち、小笠原満男が引退を発表する。その会見のなかで、小笠原は元チームメイトであり、指揮官について次のように語っている。

「(大岩)剛さんへの感謝の気持ちはある。ずっと言ってきたのは、特別扱いはされたくないということです。いろんなことも剛さんだから我慢できたこともあるし、(現役時代から)剛さんの背中を見てきたものもある。感謝しかない。来シーズンもこのチームを勝たせてほしいなと思います」

 大岩が現役を引退した2010年シーズン、鹿島は天皇杯で優勝している。その優勝カップを、小笠原は大岩に手渡した。

 大岩のラスト2シーズンは、どちらもリーグでの出場はわずか6試合。ベンチを温めるベテランの背中を小笠原は見ていた。自分の境遇を悲嘆せずトレーニングに励み、「チームのために」と貢献方法を模索する大岩の姿が、自身が同じ立場になったときに強く思い起こされたことだろう。

内田も、永木も抱える悔い。

 それは小笠原だけに限らない。天皇杯準決勝の前日に大岩の退任が発表された時、選手たちからは無念の声が上がった。

「(優勝して監督を男にするという約束を)リーグ戦で失敗しちゃったからね」と内田篤人は静かに語った。そして、永木亮太も自分たちを責めた。

「リーグ戦を獲れなかった無念はリセットされていません。今年にかける気持ちはすごく強かったですし、優勝争いをして一時期は1位に立てたのに、そのまま終えられなかったという不甲斐なさがある。

 その結果、(大岩)剛さんも辞めることになってしまったので。やっぱり選手たちはその責任をしっかり感じないといけないと思う。その悔しさや責任感を明日の試合やその次の決勝にぶつけないと。切り替えるというよりは、それを糧にして優勝したいという気持ちです」

【次ページ】 怪我人が続出、主力の欧州移籍。

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